本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、パロアルトネットワークスで代表取締役会長兼社長を務めるアリイヒロシ氏と、マイクロストラテジー・ジャパンのプレジデントである印藤公洋氏の発言を紹介する。
「セキュリティーにおいてAIの役割が今後どんどん大きくなっていく」
(パロアルトネットワークス 代表取締役会長兼社長 アリイヒロシ氏)
パロアルトネットワークスで代表取締役会長兼社長を務めるアリイヒロシ氏
パロアルトネットワークスが先ごろ、人工知能(AI)を活用してセキュリティー業務を簡素化するオープンなセキュリティープラットフォーム「Cortex」(コーテックス)を発表した。アリイ氏の冒頭の発言はその発表会見で、セキュリティーとAIの関係について語ったものである。
Cortexはこれまで同社が提供してきた「Application Framework」を進化させたものと位置付けられており、Googleのクラウド基盤サービス「Google Cloud Platform(GCP)」上で新たに構築したとしている(図参照)。
図:Cortexの概要(出典:パロアルトネットワークスの資料)
Application Frameworkについては、2018年3月29日掲載の筆者の連載コラム「一言もの申す」に記した「セキュリティベンダーは“プラットフォーマー”になれるか」を参照いただきたい。また、今回の発表内容については関連記事をご覧いただくとして、ここでは会見の質疑応答で筆者が聞いた2つの質問に対する回答を記しておきたい。
まず1つ目は、Cortexは概要図にあるように、同社だけでなくパートナーやユーザー企業もこのプラットフォーム上でアプリケーションを開発できるエコシステム作りを目指しているが、日本で前身のApplication Frameworkを提供し始めてからおよそ1年経った中で、賛同企業がどれくらいの数になっているのか。また、このエコシステムをこれから広げていく上で、ビジネス的な観点で大きなポイントになるアクションは何か、という点だ。
これに対しては、賛同企業数は明らかにしなかったが、アクションとしてはGCPに移行したことと、2019年内に国内で自前のデータセンターを設ける予定を明らかにし、「(エコシステムとして)日本市場で1000億円規模のビジネスポテンシャルがあると考えている」と答えた。
もう1つは、Cortexは皮質、特に「大脳皮質」と和訳されるが、この言葉にどのような想いを込めているのか、という質問だ。
これに対しては、「Cortexにはまさしく大脳皮質をイメージするようなAIを活用したセキュリティープラットフォームに仕立て上げていきたいという想いを込めている。ただ、いくら優れた大脳皮質でも学習させていかないと使いものにならないので、そのために必要なデータや教材は私たちの方でしっかりと提供していきたい。Cortexというのはそのための道具立てでもある」とのことだった。
セキュリティーベンダーとして非常に興味深い取り組みである。大いに注目しておきたい。