業務プロセスの革新にもつなげられるBIツール
ユーザー企業の事例取材についても印象深かった話を紹介しておこう。
例えば、全国におよそ100店舗を展開している小売企業では、MotionBoardによって単に業績の数値を可視化するだけでなく、そこから抽出した独自の指標をもとに数値を伸ばすための仮説を立て、その仮説をもとに数値の予測を行うことで、先を見越した経営を実践していた。
また、この小売企業ではMotionBoardの活用を業務プロセスの革新にもつなげていた。まず、経営者としての意思を示した指標について自ら現場のマネージャーに指示、説明し、チェックを行う。一方、現場のマネージャーはその指標をもとに具体的なアクションプランによる仮説を立て、それに基づいた予測の数値を経営者にフィードバックする、といった具合だ。
つまり、経営者が指標を通じてやるべきことの指示を行い、それをもとに現場サイドはどうやるかを考えて動き、マネージャーが予測を通じて達成したい数値を明示するといった形だ。トップダウンとボトムアップを組み合わせた業務プロセスの流れが、MotionBoardを通じてできている事例である。
ちなみに、この小売企業ではMotionBoardについてまず役職者からなるマネジメント層で活用し、その後、全社員へ広げていった。さまざまな導入形態があるだろうが、こうした形も“BIの民主化”の一例と捉えることができよう。
BI市場のこれまでの経緯については、2019年1月23日掲載の本コラム「IBMの新製品を機に振り返るBIの変遷」をご参照いただくとして、最近もビッグデータ分析のニーズが高まってきたことに伴い、新たなBIツールが相次いで登場している。
だが、筆者はこれまでの実績を踏まえて、MotionBoardが日本企業における“BIの民主化”を推進する最有力ツールになるのではないかと期待している。外資系ベンダーのツールばかりが目立つBI市場で、“日本発”ツールもぜひ奮起してもらいたい。