欧州議会は現地時間4月16日に、国境管理や移民管理、法執行機関のシステムを相互に接続し、EU市民および非EU市民のバイオメトリクス情報を追跡できる、検索可能な巨大データベースを構築する法案を可決した。
この新しいデータベースは「Common Identity Repository」(CIR)と呼ばれるもので、完成すれば、3億5000万人以上の記録を統合したものになる。
CIRは、身元情報(名前、誕生日、旅券番号、その他の詳しい身元確認情報)とバイオメトリクス情報(指紋や顔のスキャン情報)の両方を集約するように設計されており、データは入出国管理機関や法執行機関で利用される。
その主な目的は、EUの出入国管理機関や法執行機関の担当者が個別のデータベースをバラバラに検索する手間を省き、素早く検索を行えるようにすることだ。
相互接続のフレームワーク(ECの2018年6月の資料より)
欧州議会は、CIRの構築に関する2件の法案を可決した。欧州議会と欧州委員会は、民衆のプライバシー権を保護し、担当者のデータへのアクセスを規制するための「適切な保護手段」を講じると約束している。
2018年にこの共有バイオメトリクス情報データベースを構築する計画が公表されて以降、プライバシー擁護団体は、CIRの構築は「ビッグブラザー(ジョージ・オーウェルの小説「1984年」に登場する架空の独裁者)的中央集権EU加盟国データベース」の構築に向かう「引き返せない地点」を越えるものだとEUを批判してきた。
CIRが稼働すれば、中国政府が利用しているシステムや、インドの「Aadhar」に次ぐ、世界最大級の住民管理データベースになる。
米国では、税関・国境警備局と連邦捜査局(FBI)が同様のバイオメトリクス情報データベースを運用している。
このデータベースは、法執行機関は移民や犯罪者を追跡するための優れた道具を必要としているという議論で正当化されているが、このようなシステムは徐々に犯罪捜査の対象ではない人々(例えばEUを旅行するツーリストなど)にも拡大される恐れもあると指摘されている。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。