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ウェブの憂える現状--生みの親が提唱する「協定」は救いの手となるのか?

Steve Ranger (ZDNet UK) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子 沙倉芽生

2019-06-03 06:30

 現在では、世界の半分の人々がインターネットにアクセスするようになっており、30周年を迎えたウェブによってもたらされたイノベーションは、すべてを挙げるのが困難なほど多岐にわたっている。

 しかしここ数年、インターネットに対する懸念が生じつつある。ウェブによって情報が以前よりも簡単に入手できるようになり、新たなビジネスモデルが生み出され、人同士がつながるようになり、日々の生活が楽になった一方で、ウェブはもはや生活レベルを向上させておらず、ダメージをもたらしているという側面もある。

 デジタル監視社会の台頭や、政府主導のウェブ管制、誤った情報、個人データを利用して莫大な利益を上げる企業といった状況すべては、オンライン世界でのわれわれのエクスペリエンスを損なうものとなっている。

 かわいらしい猫の写真や、拡散すべきインターネットミームはいったん忘れてほしい。われわれとウェブの間に取り交わされた契約は、ファウスト博士と悪魔メフィストフェレスのそれによく似たものとなってきている。

 こうした憂いの声に応え、「World Wide Web」(WWW)を1989年に発案したTim Berners-Lee氏は2018年11月、「Contract for the Web」(ウェブのための協定)と同氏が呼ぶ、ウェブに関する新たな取り決めについての計画を明らかにした。

 この協定はウェブに関する一連の理念であり、企業や政府、個々のユーザーがウェブの健全性を維持していくための行動指針を概説するものだ。

 World Wide Web Foundationの最高経営責任者(CEO)Adrian Lovett氏によると、この理念の背後には、ウェブというものが人のために公共の利益を供する存在であり、人がウェブのために存在しているわけではないという考えがある。World Wide Web Foundationは、この計画を成功させるための取り組みを続けている。

 では、一体ウェブの何がおかしくなってしまったのだろうか。

 「過去4~5年でゆっくりと、最初は見えにくい状態で方向転換した」とLovett氏は語る。この動きのきっかけとなるような出来事は特に起こらなかったものの、去年発生したCambridge Analyticaによるスキャンダルは決定的瞬間のひとつだったとLovett氏は述べている。

 Contract for the Webは、9つの基本原則に基づいている。その内容は、政府に対し、誰もがインターネットに接続できるよう保証することと、ネット上のすべてにいつでもアクセスできるようにしておくこと、そしてプライバシーに対する基本的人権を尊重することを求めている。企業に対しては、インターネットを安価にして誰もがアクセスできるようにしておくこと、消費者のプライバシーと個人データを尊重すること、そして人類の最高の部分をサポートする一方で最悪の部分を克服するようなテクノロジーを開発することを求めている。さらに個人に対しては、各ウェブユーザーがクリエイターとなり協力者となること、またウェブをオープンに保てるよう努力するよう求めている。

 このような意識の高いコンセプトに異論を唱える人はほとんどいないが、インパクトを与えるにはそれ以上のことが必要だということもFoundationは認識している。

 「この原則の状態で立ち止まってしまうと、単なる聞こえのいい言葉以上のものにならないことは明らかだ」とLovett氏も認めている。そのためFoundationでは、この契約を結ぶ政府や企業が実際に原則を遵守しているか確認する取り組みを進めている。

 どのように確認するかについては、Foundationが模索中だ。

 「ひとつの法律やひとつの自主的なコードで解決するものではない。議題の幅広さや課題の複雑さを認識すると、そこからさまざまなことが出てくるだろう」(Lovett氏)

 例えば、非常に例外的な状況でない限りインターネットを遮断しないという契約を正式に政府に結んでもらうことや、プライバシー関連の新たな規制を提案すること、定期的に説明責任報告書を発行し、ウェブをオープンに保とうとしている人たちや、その逆方向に向かっている人たちに注目してもらうことなどが考えられる。

 Foundationには、基本原則のアイデアを試し、具体化すべく取り組んでいるグループが存在する。グループメンバーのうち半数は非政府組織や選挙運動団体などの市民で、35%は民間企業出身、15%が政府関係者となっている。

 ただ、この契約を支持している企業の中には、FacebookやTwitter、Googleといった大手テクノロジー企業も存在する。こうした企業は、ウェブが降下の悪循環に陥っている状況に少なくとも一部は責任があるとして、頻繁に批判の的となっている。

 これらの企業がわれわれをこの混乱状況に導いたのだとしたら、彼らがここから抜け出せるようにしてくれるのだろうか。その答えには、大手テクノロジー企業が関与すべきだとLovett氏は主張する。

 「われわれは問題のある場所と権力のある場所に行き、そのことについて実際に何かできる手段にたどり着かなくてはならない。つまり、人を集めてくるということ。そのことに関してはかなり堂々とやるつもりだ。とはいえ、このプロセスは数カ月後、数年後にどうなるかで判断されるということはちゃんとわかっている」(Lovett氏)

 現在多くの人が体験しているウェブは、人類の最高の部分を引き出してはいないとLovett氏は語る。ただし、人は今もウェブの初期に示されたコアバリューには賛同しているという。そのコアバリューとは、ウェブがイノベーションとエンタープライズのためのフリースペースであり、人々や人間の多様性に関する最高の部分を引き出すことを目指している、という点である。

 「このコアバリューは目指せると考えている」とLovett氏。「問題を解決するにあたって明らかに十分すぎるエネルギーがすべてのレベルで存在している。そのため、行き過ぎてしまったという考えや、大企業や現在のウェブのアーキテクチャに歯止めのきかない何らかの力が働いているという考えには賛同できない」

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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