調査

クラウドのコスト管理・請求処理にも「Excel」--モビンギが利用企業の実態調査

藤本和彦 (編集部)

2019-05-31 06:30

 モビンギは5月29日、クラウドを利用する企業におけるコスト管理と経理業務の状況をまとめたレポートを発表した。企業のクラウド活用は進んでいるものの、劇的なコスト削減効果は体感できておらず、大きな課題になっている。また、クラウドサービスのコスト管理や請求処理には、多くの企業が「Excel」を利用しているという実態が浮き彫りになった。

 今回の調査は同社から委託を受けて、アイ・ティ・アール(ITR)が2019年3月に実施した。年商1億円以上かつ従業員数100人以上で、IaaS/PaaSを利用している国内企業の担当者を対象にしている。有効回答数は946件。

 クラウドの利用に当たり、ほとんどの企業が何らかの課題に直面している。具体的には、45%の企業が「コストの低減」を課題に挙げる。これに「リソース消費量の抑制」(32%)と「ワークロード分析によるリソース最適化」(30%)が続く。コストに影響を与える項目が課題となっている実態が浮き彫りとなったといえる。

 レポートによると、オンプレミスのシステムをクラウドに移行し、コストが「大幅に削減された」と回答する企業が16%にとどまった。モビンギでは、「やや削減された」(61%)と回答した企業を含め、8割以上の企業において、さらなるコスト削減効果を得るための余地があると考えている。

クラウド利用における運用コストの削減効果
クラウド利用における運用コストの削減効果

 IaaS/PaaSでは、依然として仮想マシンの利用率が多く、仮想マシンのコスト抑制はクラウド利用全体のコスト低減につながる。そのコスト削減策の一つとして、予約インスタンスの活用が挙げられる。一定期間のリソースを予約することで割引を得られるというものだ。今回の調査では、回答企業の半数以上が予約インスタンスを利用して、コストの低減に取り組んでいることが分かった。

 その一方で、コスト管理・経理業務において専用の請求管理ツールやコスト分析ツールを利用する企業は30%未満になっており、多くの企業で表計算ツールの「Excel」が利用されていることが明らかになった。クラウド利用料の経理処理にかかる日数については、7日以上の日数をかけている企業が全体の半数強である実態が明らかにされており、請求作業の長期化が課題になっている。

 コスト分析については、プロバイダー別に見ると、Googleでは7割の企業がコスト分析を行っているのに対し、Microsoftでは64%、Amazon Web Services(AWS)では53%という結果となった。

コスト分析の実施状況
コスト分析の実施状況

 また、請求処理ツールについても「Excel」(37%)や「クラウド事業者の提供する機能」(35%)が日常的に使用されているという。クラウド事業者の請求をそのまま利用するのではなく、独自に請求処理のための算出を必要としている企業が増加しており、複数部門が利用するクラウドの利用料を適切に配分したり、請求処理の工数分を上乗せしたりなど、割り振りの仕方や工数の乗せ方に苦慮している状況だと分析する。

 こうした状況を受けて、モビンギでは、クラウドに特化した経理処理や請求管理ツールの活用によって、請求処理を効率化し、的確なコスト分析が可能な環境を整備することが今度のポイントになるとしている。

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