順天堂大学ら、医療用VRシステム「うららかVR」を提供開始--不安や痛みを緩和

大場みのり (編集部)

2019-06-14 10:34

 順天堂大学と仮想現実(VR)サービスを提供するパルスは6月11日、医療用VRシステム「うららかVR」の提供を開始した。パルスの親会社のイグニスが発表した。うららかVRは、順天堂大学大学院医学研究科の堀江重郎教授、医学部麻酔科学・ペインクリニック講座の井関雅子教授、パルスの臨床研究をもとに開発。入院時の不安や3カ月以上続く慢性的な神経障害性疼痛(とうつう)の緩和が目的だ。

 同システムは、VRコンテンツ、VRデバイス、外部通信端末で構成されている。順天堂大学の臨床試験で認められた10本のVRアプリが収録されており、シューティングゲームや森林・海中を歩く映像など、最新のVR技術を用いたコンテンツが今後も追加されていく。

 VR映像のクオリティーについて、パルスの開発責任者でVRデザイナーの木下将孝氏は「VRカメラで撮影された立体映像だけでなく、複数の独自開発技術により、実写と遜色ないCG作品も収録した」と語っている。

VRコンテンツのイメージ(出典:イグニス)
VRコンテンツのイメージ(出典:イグニス)

 VRデバイスに関しては、あらゆる場所・姿勢で利用できるようデザインしたという。モバイル一体型のため、簡単に持ち運びでき、音声入力機能により点滴などで腕が不自由な場合でも利用可能だとしている。

 一方、病院などの医療提供者が使用する管理画面は、利用状況をリアルタイムで集計し、ユーザーが感じている痛みの度合いなどを統計的に測定できる。利用状況はオフライン時も端末に記録され、オンライン時に蓄積されたデータがクラウドに自動送信される。

 堀江教授は「ビデオゲームは、手や知覚を動かす運動神経に働きかけ、不安や恐怖、疼痛と関係する脳内の領域である扁桃に作用するため、これらの感情を軽減することが分かっている。またゲームで報酬を得るとドーパミンが生み出され、結果として痛みや恐怖が抑制される。特にVRのゲームは、その没入感の高さから痛みを感じることへの『集中』や『執着』から患者を切り離す可能性を秘めている」と述べる。

 井関教授は「注意を痛みからそらすことに加え、治療として定期的に利用することにより、痛みのネットワークが緩んでいくかもしれないと期待している」と話している。

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