ランサムウェア攻撃で身代金の支払いを検討すべきか--フォレスター提言

Larry Dignan (ZDNET.com) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2019-07-07 10:30

 米国の複数の地方自治体が立て続けにランサムウェア攻撃の被害を受け、ITインフラを復旧させるために身代金の支払いに応じたという。攻撃によって自治体関係者が慌てふためいた様子は想像に難くない。そして彼らの慌てふためきは、妥当なものという見方もできるかもしれない。

 簡単に言うと、身代金を支払った方がよいという議論もあるということだ。

 Forrester Researchは最近のレポートで、身代金の支払いは現実的な選択肢と捉えるべきであり、業務遂行上のその他の決断と同様に評価するべきだと主張している。フロリダ州のレイク・シティリビエラ・ビーチは身代金の支払いを現実的な選択肢だと判断した。ジョージア州ジャクソンも同じだ。米国のサイバーセキュリティ企業Recorded Futureは5月、米国の地方自治体を標的とするランサムウェア攻撃の急増に焦点を当てた。被害に遭った自治体としてマサチューセッツ州リンや、ジョージア州カータースビル、メリーランド州ボルチモアなどが挙げられている。

 身代金の支払いが社会通念から外れると捉えられる場合も確かにある。また、非常に嫌な気分にさせられるものであるかもしれない。しかし、企業であれ、地方自治体であれ、機能停止状態が何日も続いた場合のコストは莫大なものとなる。そういった点で、身代金の支払いは、業務遂行上のその他の意思決定と同様に捉えるべきだという。ForresterのアナリストであるJosh Zelonis氏とTrevor Lyness氏はレポートのなかで、最終的に身代金を支払わないという結論に至るにしても、現実的な選択肢として少なくとも検討はすべきだと述べている。なお、ランサムウェア攻撃の被害は平均で7.3日間続くという。

 身代金の支払いを検討する価値があるのはなぜだろうか?Forresterは以下のように記している。

 ランサムウェアの影響が長期間に及ぶと、日常業務がまひ状態に陥るため、組織は中核業務を遂行するための新たな手段を慌てて探すことになり、皆がストレスを抱えるようになる。この問題は、攻撃の影響を受けていない適切なバックアップがあったとしても一筋縄ではいかない。そして多くの組織は、備えておくべき混乱の規模を著しく過小評価したり、攻撃されても使用し続けられる機能についてあまりにも多くの思い込みを抱いている。

 またForresterは、大規模な復号化は難しく、コンサルタントが必要になるとも記している。さらに、ハッカーが復号鍵を渡さない可能性もある。

 最終的に身代金の支払いは、業務遂行上のその他の意思決定と変わりがないようになってくる。Forresterは、ランサムウェアの黒幕である脅威アクターが価格交渉に応じる可能性にも言及している。組織は、自らによる復旧能力から、コンサルタント料金、復旧計画に至るまでのあらゆるものごととともに、サイバーセキュリティ保険や、身代金の支払いがその対象に含まれているかどうかについても検討する必要がある。保険会社が身代金の支払いをどう捉えるのかや、金額の低減に向けた交渉に何らかのかたちで介入できるのかについては、以前から議論の対象となっている。


提供:Forrester Research

 Forresterが挙げているベストプラクティスには以下が含まれている。

  • サイバー攻撃および業務障害の保険に加入する。
  • バックアップからの大規模復元能力についてのベンチマークテストを実施しておく。
  • 身代金はビットコインで支払うよう要求されるため、どのようにして暗号通貨を入手し、支払うかについて計画しておく。
  • サイバーセキュリティレスポンスチームを確保しておく。
  • ランサムウェアの専門家を雇用する。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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