欧州刑事警察機構(Europol)は「Do criminals dream of electric sheep: How technology shapes the future of crime and law enforcement」(犯罪者は電気羊の夢を見るか?:テクノロジーが将来的に犯罪と司法当局にもたらす変化)と題したレポートのなかで、犯罪者によって近い将来にもたらされる脅威に対応できるよう、司法当局は現段階で革新的かつ積極的な行動を起こす必要があると警告している。
人工知能(AI)や量子コンピューティング、5G、IoTの興隆は、サイバー犯罪者によって悪用された場合にその脅威を増大させる可能性のある新興テクノロジーのほんの一部であり、司法当局は市民の安全維持に向けて迅速にイノベーションを推進する必要があると同レポートは述べている。
Philip K. DickのSF小説「Do Androids Dream of Electric Sheep?」(アンドロイドは電気羊の夢を見るか?)にちなんだ題名のこのレポートでは、新興テクノロジーがサイバー犯罪にもたらす可能性のある影響が考察されている。
また同レポートでは、サイバー犯罪と戦ううえで司法当局自らが新興テクノロジーを活用していけるはずだと述べられている。例えば、システムやデバイスのセキュリティ強化に向けて司法当局が活用できるテクノロジーとしてAIについて詳細に語られている。
その一方、ハッカーらはAIを利用して悪意のある電子メールや応答を標的に応じて手直ししたり、格好の標的を見つけ出したりすることでフィッシング攻撃の成功確率をさらに高めるといった、悪意あるアクティビティを実行するための新たな攻撃ベクターを手に入れる可能性もあると警告されている。
またAIの普及によって、専門知識に乏しい脅威アクターによる洗練されたキャンペーンの展開が格段に容易になるという。その影響が表れかねないとEuropolが懸念している領域にディープフェイクや偽情報がある。同レポートは「犯罪者らは組織に対して詐欺を実行するために、標的となる組織の幹部に虚偽の発言をさせるディープフェイク動画を既に利用しているとの報告がある」と警告してすらいる。
量子コンピューティングもまた、欧州市民のサイバーセキュリティに対する潜在的なリスクとして挙げられている。専門家らは、量子コンピューティングがシステムのセキュリティ向上に役立つ可能性を指摘している一方で、Europolはこのテクノロジーが悪人の手にわたる可能性もあり、そうなった場合にはシステムで現在標準的に用いられている暗号化手法を破るために悪用できると警告している。