直近の分科会では、第1部でメンバーから発議のあった「トラブル発生時の穏便な処理方法」について議論しました。センシティブな内容のため具体的には記載できないのですが、ハラスメントに関連する問題が目立っていました。今回は、第2部で議論された「稼働中エンジニアの条件交渉の進め方と注意点」について取り上げます。
システムエンジニアリングサービス(SES)は人海戦術を中心とした労働集約型の業界です。エンジニアの人事評価や能力向上、目標設定、給与交渉など、さまざまな業務が発生しています。SESの契約はプロジェクトごとに期間を定めて業務を遂行するため、参画するメンバーや派遣先企業も一定ではありません。
SES企業はクライアント企業との交渉でできるだけ良い条件を引き出さなければなりません。そうしなければ派遣されるエンジニアは報われません。実際、多くの分科会メンバーが頭を悩ませているのが現状です。
議論をまとめた内容は下記の通りになります。
エンジニアの能力向上などにより、開発だけでなく設計にも携われるようになったり、当初の業務以上のことをするようになったり、プロジェクトに必要な資格を取得したりなど、その時々で求められる明確な材料を持って、報酬や増員などを交渉するのが望ましいでしょう。分科会メンバーの過半数がこの意見に賛同していました。
また、プロジェクトの終了などによって次の派遣が決まった際は、条件交渉のチャンスであるという意見もありました。金額交渉はもちろんですが、エンジニアの能力向上も考えてリーダー職にチャレンジするきっかけ作りとして活用してもいいでしょう。
稼働しているエンジニアのドキュメントを自社でチェックし、キャリアアップやスキルアップのためのフォローをすることも大切です。その内容は、クライアント企業に随時アピールするのに役立ちます。目の前のプロジェクトに没頭していると、エンジニア自身が自分で気付くのはなかなか難しいものです。そういう意味では、非常に良い取り組みなのではないでしょうか。
メールなどの証拠を残しておくことも重要です。その上で、例えば、稼働しているエンジニアが要件整理などの作業に携われるようになったら、報酬額を引き上げるといった条件を事前に取り決めておくという意見もありました。
一方で、条件交渉はクライアント企業によっては、必ずしも良策とはならない場合もあるようです。そのようなときはエンジニアのことを考慮し、他社のプロジェクトに異動させるなどの対応が必要になります。ただ、現在のIT人材に対する需要の高さからすると、スムーズに進められるかもしれません。
若手や熟練のエンジニアが混在するシステム開発領域では、まだまだ条件通りにならないことも多く、今後は標準化や平等性を追求する時代が来るのかもしれないと感じました。
SES業界のビジネスモデルを追求する上で、条件交渉は避けては通れないものであることを再認識するとともに、能力開発や意欲向上といったエンジニアのケアも大切な要素であることが明確になりました。今後も各社の取り組みを楽しみにしています。