「経営戦略に遅れている」双日から見える人事部門に不足しているもの

阿久津良和

2019-11-13 06:45

 「個人の成長があって初めて企業の持続的成長が担保される」――。

 パーソルグループが10月23日に開いたイベント「パーソルカンファレンス」で大手商社の双日の理事であり、人事 総務・IT業務担当副本部長 兼 人事部長を務める河西敏章氏がこう語った。

 河西氏はパーソル総合研究所 タレントマネジメント事業本部長 大下徹朗氏と同研究所 シンクタンク本部 井上亮太郎氏と一緒に「事業戦略を加速させるニッポンの人事部 -『人が命』の総合商社 双日における戦略人事の取り組みとは?」と題したセッションに登壇した。

経営戦略の未浸透が明確に

 従業員が持つ能力を最大限生かすための、戦略的な人材配置や育成を指す「タレントマネジメント」。その定義は時代ごとに変化してきた。2001年にMcKinseyが「War for Talent」で提唱した内容は冒頭で述べた通りだ。

 だが、2009年には企業の競争優位に貢献するキーポジションを特定し、有能な人材をタレントプールで開発しながら継続的コミットメントを確保する「戦略的タレントマネジメント(Strategic Talent Management:STM)」に変化。2014年にはすべての社員が才能を有することを前提にし、組織内で才能を発揮することで幸福感の増進が組織の成長につながる「総合的タレントマネジメント(Integrated Talent Management:ITM)」に至った。

パーソル総合研究所 シンクタンク本部 井上亮太郎氏
パーソル総合研究所 シンクタンク本部 井上亮太郎氏

 パーソル総合研究所は日本でのタレントマネジメントの普及実態を明らかにするため、6月27~30日に300人以上の日本企業で働く人事部門マネージャー300人を対象に調査。登壇したパーソル総合研究所の井上氏は、「次世代リーダー育成」「キャリア開発」「人材マネジメントの課題」の3点に絞って調査結果を報告した。

 直近3カ年における主要事業の環境変化については、「人員確保が難しくなった(76%)」「優秀な人材が不足している(77.6%)」と回答。同じく直近3カ年における次世代リーダー育成について尋ねると、「計画的な選抜・育成を注力・強化している(57%)」「重要なポジションの明確化に注力(50%)」「経営者の関与を強化(48%)」と約半数の企業が注力していることが明確になった。

 その人材選抜で重視する要件は「価値や行動特性など将来性を重視」を1位とした割合が29.3%(全体の2位)に及ぶが、全体値で見ると70%近くが同項目を選択している。キャリア開発に設問が移ると、「個人のキャリアプランについて人事部門や上司と話し合う機会設定(39.3%)」が最上位。最下位は「従業員が人生や仕事でなしたことや価値観などの組織的な把握・記録(29.3%)」と、従業員の内面を把握する試みは一部にとどまっている。

 人材マネジメントの課題について尋ねると「人事戦略が経営戦略に連携していない(33.7%)」「組織的な意思決定に時間がかかる(26%)」「詳細な人事データを活用できるほど人事制度に柔軟性がない(25%)」が上位に並ぶ。

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