「ボットだから話せることがある」--対話AIの先駆者、NTTレゾナント社員に聞く

大場みのり (編集部)

2019-11-20 07:00

 「AIが恋愛相談に乗る」ーー2016年、NTTレゾナントのサービスが話題を呼んだ。自社で運営しているQ&Aコミュニティー「教えて!goo」に投稿された恋愛カテゴリーの質問に対し、人工知能(AI)が過去の約3000万件のQ&Aデータを活用してアドバイスをするというものだ。

 同社はその後も、自社の知見を生かした対話AI導入支援サービス「goo AI x DESIGN」や、一般の人々がチャットボットを作成できる基盤「goo botmaker」など、BtoB(対法人ビジネス)・BtoC(対消費者ビジネス)の両方で斬新なサービスを開発している。goo AI x DESIGNは、日本テレビ放送網のドラマに登場するキャラクターのチャットボットや、就活生の質問にAIが答える「JAL就活AIチャットボット」などに採用されている。

 チャットボットは近年、働き方改革の影響もあり業務効率化のツールとして注目されているが、その先の段階として企業のマーケティングにも活用することができる。NTTレゾナントは業務効率化に加えてマーケティングを目的としたチャットボットも開発・提供しており、現在の割合は業務効率化が約6割、マーケティングが約4割だという。

 そこで今回、これらのチャットボットを手がけるスマートナビゲーション事業部 サービステクノロジー部門 担当部長の松野繁雄氏とCA部門 サービス開発 担当課長の河村智司氏に、サービス開発の背景や対話AIの現状について話を聞いた。対話AIの先駆者といえる2人は、一体どんなことを考えているのだろうか。

松野氏(右)と河村氏(左)。松野氏が法人向け、河村氏が消費者向けサービスを主に担当している
松野氏(右)と河村氏(左)。松野氏が法人向け、河村氏が消費者向けサービスを主に担当している

ーーNTTレゾナントでは、AIがボケやツッコミをするチャットボット「AI芸人」など、ユニークなサービスを数多く開発している印象があります。開発における着想源を教えてください。

松野氏:われわれは「人に寄り添うAI」というテーマのもと、開発を行っています。例えばAI芸人の場合、「笑い」と「寄り添う」には一見関連性がありませんが、笑いにはストレスを解消したり人生を豊かにしたりする力があるので、人に寄り添うことにつながると考えています。

河村氏:社内では現在、消費者向けの事業の参考としてgoo botmakerで作りたいチャットボットを募集しています。その中で、「普段あまり褒められることがないので、褒めてくれるチャットボットがあったらいい」「妻の機嫌を取ってくれるチャットボットがほしい」といったアイデアが挙がっています。このように、チャットボットに求めることは人間に求めることと変わらない一方、人間同士では実現しにくい「理想的なコミュニケーション」に需要があると感じます。相手が人ではなくチャットボットだからこそ話せること、言ってもらえることがあるはずなので、そういった欲求を叶えるものを作りたいと考えています。

ーーNTTレゾナントが提供するチャットボットの強みを改めて教えてください。

松野氏:われわれは、ディープラーニングを活用して自然な対話を実現するAIを作っています。なので、文脈を理解して応答することが可能です。また自社で言葉のデータを大量に保有しているので、顧客企業は独自のデータが少なくてもチャットボットを導入することができます。AIの根幹とは、自然言語処理だと思います。NTTは40年以上、自然言語処理を研究しており、NTTレゾナントも自社のポータルサイト「goo」のデータを活用して研究してきました。われわれが持つ膨大なデータによって、表記揺れを理解したり言葉を定義したりすることができます。

ーー対話AIの課題と可能性について、どのようにお考えですか。

松野氏:深い文脈の理解は、まだまだだと思います。前日に話したことを覚えていて「昨日こんなことを話していたから、こうなんじゃないの?」などと返すことは、どの企業・組織もできていません。われわれは2つぐらい前の会話をAIが理解して、その上で返答することを実現していますが、これができていること自体、日本では珍しいです。深い文脈の理解を実現するには、AIのアルゴリズム改良とコンピューターの処理速度向上が必要です。一方、2018年にGoogleがディープラーニングを使った自然言語処理の最新モデル「BERT」を発表しました。現在、世界的にこのモデルを活用した深い文脈の研究が行われているので、今後も進化は続くと思います。

河村氏:FAQ(Frequently Asked Questions)のように、質問に対して正しい答えを返すといったやりとりだったら可能ですが、コミュニケーション領域に関しては、どの企業・組織も課題を抱えています。ましてや、「AIが人間を作る」といったことは何年かかるか分かりません。ですがコミュニケーションだからこそ、ユーザーが「これってこういう意味なのかな」と、チャットボットの発言を補完しながらやりとりを続ける姿がみられます。これはAIの可能性ではないですが、人間の可能性だと感じます。

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