この連載では、英語の習得を目指しているITエンジニアや、社内研修を実施・検討している企業の担当者に英語学習でのポイントを紹介する。これまで社会人になってから英語の勉強を始めたITエンジニアたちの勉強への向き合い方や英語を習得していくプロセスを紹介したが、今回は英語学習プログラム「cooori(コーリ)」を使った法人向け英語学習サービスを取り上げる。
coooriは現在、日本航空やSAP ジャパンなどさまざまな企業で利用されている。その鍵は、coooriを開発・運用する企業コーリ・ジャパンが開発した人工知能(AI)「3O(スリーオー)」だ。3O は、5万時間以上にわたるユーザーの学習データを蓄積し、日本人の英語学習者が陥りやすい間違いなどを解析している。加えて、各ユーザーの回答履歴や習熟度、記憶力を把握することで、個人に合ったコンテンツを提供しているという。そこで、コーリ・ジャパン 創立者兼CTO(最高技術責任者)のArnar Jensson博士に話を聞いた。
コーリ・ジャパンの Jensson博士
ーーcoooriを開発したいきさつを教えてください。
私はアイスランド人で、これまで英語や日本語、デンマーク語、ドイツ語を学んできましたが、どの言語も習得に苦労しました。2003年に来日して日本語の授業を受講した際、とても驚きました。当時は既にコンピューターが普及していたにもかかわわらず、言語の学習方法が大昔と全く変わっていなかったからです。
学生時代は自然言語処理や音声認識、AIなどを学び、言語学習に生かせる技術がたくさんあると分かりました。2009年に大学院を卒業後、外国語学習の経験とITの知識を生かして言語学習プログラムの開発に着手しました。「自分がやらなくて誰がやるんだ」という使命感に駆られたのです。
ーー英語学習にAIを活用する利点を教えてください。
通常の教材を使った場合、学習者は1ページ目から順番に問題を解いていきます。一方、AIは学習者の弱点をベテランの教師のように診断し、個人に合った問題を提供してくれるので、はるかに効率的です。
ーー開発当初はユーザーの学習データがなかったはずですが、何を参考にして問題を出題していたのでしょうか。
確かに最初はAIの学習データがなかったので、大学教授らのアドバイスをもとに英語学習のアルゴリズムを作りました。その後、着実にユーザーの学習データを収集して今に至ります。
ーーTOEICスコアが高いからといって英語力が高いとは限らないという意見もあります。coooriがTOEICのスコアアップを目指す理由を教えてください。
スピーキングスキルを数値化することは難しいですが、TOEICにおけるスキルは数字(得点)で計測できます。顧客企業にユーザーである社員の能力がどれくらい向上したのかを示すことができるので、われわれはTOEICに特化したサービスを提供しています。
ーー日本では人材採用などの際に、多くの企業がTOEICのスコアで応募者の英語力を判断しています。その点についてはどう思いますか。
確かにTOEICスコアと英語力は必ずしも一致するわけではありません。ですが高いスコアを持っているということは、英語でコミュニケーションをするための十分な土台があるといえます。