10分で苦手分野を洗い出す--トライグループとAI企業が学力診断サービスを開発

大場みのり (編集部)

2019-08-09 07:00

 学習塾を展開するトライグループと人工知能(AI)企業のギリアは8月6日、「診断型AI教育サービス」の開発・展開を発表した。2019年8月~2020年4月にわたり、実証研究という形でトライグループの生徒と入会を検討している中高生約7万人にサービスを提供する。なお、高校生のデータは現在収集中のため、現時点での対象は中学生のみとなる。ギリアは、ソニーコンピュータサイエンス研究所などが出資して設立したAIの事業会社。同サービスの開発・展開に当たり両社は、資本業務提携を締結した。

 診断型AI教育サービスは、初回の授業で実施される学力診断に活用される。トライグループには、生徒に直接勉強を教える教師のほか、生徒の学習を包括的にサポートする「教育プランナー」が存在する。教育プランナーは初回の授業で生徒から学習課題を聞き出し、その答えをもとに学習カリキュラムを作成する。だが、多くの生徒は「英語はまあまあ得意」「図形は何となく苦手」など感覚的に答えるため、特に新人の教育プランナーの場合、生徒の話を聞いて現状を把握することが難しいという。そこでトライグループは、新人の教育プランナーでもベテランと同等、それ以上の精度で生徒の学力を診断するべく、ギリアと共同で診断型AI教育サービスの開発に取り組んだとしている。

 学習診断は、タブレットを使って実施する。形式はA、Bの2択で、分からない場合や、まだ学習していないものは「わからない」を選ぶ。正確な診断のため、選択問題だからといって勘で選ぶのは禁止されている。

 学習診断の「英語」を筆者が実際に体験したところ、書き換えや並び替えの問題が表示された。緊張していると、正解だと思うボタンとは違うものを誤って押してしまいそうだと感じたが、その場合はやり直すことができ、別の問題が表示されるという。回答をもとに全単元が「得意」「やや苦手」「苦手」に分類され、苦手な単元が分かる仕組みだ。診断後、単元ごとの理解度を1~3つの星で示した帳票が作成される。星が1つのみの単元は理解していない可能性が高いとされ、問題を多めに解くことが推奨される。

表示された問題の一部。中学1~3年の単元から出題される
表示された問題の一部。中学1~3年の単元から出題される
診断後、作成された帳票。これをもとに学習カリキュラムを組み立てる
診断後、作成された帳票。これをもとに学習カリキュラムを組み立てる

 診断型AI教育サービスの最大の特徴は、「5教科(英語、数学、国語、理科、社会〈地理・歴史・公民〉)」と「あらゆる学力の生徒」に対応している点だと両社は説明する。「数学などの論理系教科に特化したものや、比較的学力の高い生徒を対象としたものであれば、AIを活用した教育サービスは既にある。だが、われわれが行っているのは受験産業ではなく、教育産業。難関大学を目指している生徒もいれば、学校の定期テストで平均点を取りたい生徒もいる。診断型AI教育サービスにおいても生徒一人ひとりの目標を尊重したい」とトライグループ 常務取締役の物部晃之氏は語った。

トライグループの物部氏
トライグループの物部氏

 従来のAI教育サービスが数学などの論理系教科に特化しているのは、「2次方程式が分からなかったら1次方程式、1次方程式が分からなかったら比例・反比例」など、つまづいた問題を起点として次に解くべき問題を提示する方式である「さかのぼり学習」が有効だからだという。一方、診断型AI教育サービスはさかのぼり学習を用いることなく生徒の学力を高精度に診断するため、5教科対応を実現していると物部氏は説明する。

 では、診断型AI教育サービスはどのように生徒の学力を診断しているのか。同サービスでは、生徒の学力を全体的に測定することで全体像を把握し、各生徒の弱点を診断する解析手法を用いている。この解析手法は、AIが生徒のつまづき傾向を把握する中で、データベースを更新して最適な状態を保つという。

 通常、全単元の実力を診断する場合、1科目当たり約200問、2時間を必要とするが、診断型AIは約20問、10分で全単元の学力を診断する。ギリア 代表取締役社長の清水亮氏は「通常より180問も少ないということになるが、20問の結果から8~9割の精度で残り180問の正誤を予測する」と述べた。

ギリアの清水氏
ギリアの清水氏

 この予測を可能にしているのがトライグループが収集した膨大なデータだ。同社は今回の開発に当たり、会員の全中学生約2万2000人を対象にテストを実施。例えば「歴史」では、先史時代~昭和時代の全範囲からマルバツ形式で200問出題した。解答データは匿名で収集し、生徒の氏名や所属教室などの個人情報は一切取得していないという。

 実証研究の成果は、「定期テストの結果が診断型AI教育サービスの利用前と比べてどう変わったか」「学習診断を定期的に行い、その結果がどう推移しているか」などで判断するとしている。「診断型AI教育サービスは、教わる側の生徒のみならず、指導する教師にも便益がある。特に1人の教師が一度に30人ほどの生徒に対応しなければならない学校では、各生徒の苦手分野を把握できるこのサービスは役に立つと考えられるので、将来的には学校への提供も目指している」と物部氏は語った。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. ビジネスアプリケーション

    【マンガ解説】まだ間に合う、失敗しない「電子帳簿保存法」「インボイス制度」への対応方法

  2. セキュリティ

    企業のDX推進を支えるセキュリティ・ゼロトラスト移行への現実解「ゼロトラスト・エッジ」戦略とは

  3. 経営

    2023年データとテクノロジーはどう変わるか 分析プラットフォームベンダーが明かす予測と企業戦略

  4. セキュリティ

    リモートワークで浮き彫りとなった「従来型VPN」、課題解決とゼロトラスト移行を実現する最適解

  5. セキュリティ

    第2世代EDRはココが違う 「自動化」でエンドポイントセキュリティの運用負荷・コストを削減

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]