ガートナー ジャパンは11月25日、2019年版の「日本におけるCRMのハイプ・サイクル」を発表した。日本企業がビジネスの差別化につながる顧客中心的な顧客体験(CX)を提供する上で特に重要と考えられる顧客情報管理システム(CRM)など顧客関連のアプリケーションやテクノロジーを中心に32のキーワードを取り上げている。
“ハイプ・サイクル”はテクノロジーやサービス、関連する方法論、プラクティス、コンセプトなどのキーワードの認知度や成熟度、採用状況、それぞれのキーワードが実際のビジネス課題の解決策や新たな機会の開拓にどの程度関連する可能性があるかを視覚的に示したもの。
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顧客関連テクノロジーを担当するアプリケーションを担当するリーダーは自社システムの構築や更改に関する計画を策定するにあたり、“ハイプ(過度な期待)”にとらわれない視点に立って、該当するテクノロジーやプラクティスを導入するか否かの判断が自社に与えうる影響という観点から評価する必要がある。
2019年に入って、CRM関連市場では「デジタルエクスペリエンスプラットフォーム」「顧客エンゲージメントハブ」「カスタマージャーニーアナリティクス」「顧客データプラットフォーム」などリアルタイムかつマルチチャネルで顧客の行動を把握して、効果的な体験の提供を支援するテクノロジーへの関心が高まっていると説明。これらはいずれもハイプ・サイクルの坂を急速に上り、過度な期待のピークに向かっているという。
そのほかサブスクリプションビジネスを支援する「サブスクリプション管理」、営業担当者による効果的な営業活動を支援する「営業エンゲージメントプラットフォーム」が新たに登場。ガートナーはこれらを“黎明期”に位置付けている。
「アカウントベースマーケティング」「マルチチャネルマーケティングハブ」などが幻滅期に入りかけている。また「パーソナライゼーションエンジン」「(日本語での)スピーチアナリティクス」は幻滅期の底に向かっている。
デジタルトランスフォーメーションを成功させるには、さまざまに発展するデジタルテクノロジーの活用と、顧客の視点を持つことが不可欠と説明。多くの企業では、効果的なCXの創出方法や顧客中心型ビジネスへの転換方法に関心が高まってきています。
人工知能 (AI) やモノのインターネット (IoT) を含む、さまざまなデジタル関連テクノロジーが急速に進展、普及しているが、これらを顧客関連のテクノロジーに組み込む動きが活発になっていると指摘。そのため、旧来の顧客関連のテクノロジーやアプリケーションの改善に加え、新たなデジタルテクノロジーを取り入れる計画を担う最高情報責任者(CIO)とアプリケーションを担当するリーダーへの期待は、非常に大きくなっているとガートナーは説明する。
同社アナリストでシニアディレクターの川辺謙介氏は「優れたCXを提供するためのテクノロジーは確実に成長している。ただし、単にそれらを取り入れるだけでは、CXを通じた差別化が達成できるわけではない。CIOとアプリケーションを担当するリーダーは、自社のCX戦略とその方向性を理解し、変わり続ける市場や顧客の状況に即したテクノロジの導入と改善提案を行う必要がある」とコメントしている。