本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、日本ヒューレット・パッカードのJustin Hotard社長執行役員と、NECの渡辺望シニアエグゼクティブの発言を紹介する。
「私は暫定ではなく継続して社長を務めていくつもりだ」
(日本ヒューレット・パッカード Justin Hotard 社長執行役員)
日本ヒューレット・パッカードのJustin Hotard社長執行役員
日本ヒューレット・パッカード(HPE)が先頃、2020年度(2019年11月〜2020年10月)の事業戦略について記者会見を開き、2019年10月1日に日本法人の社長執行役員に就任したJustin Hotard氏(米HPE シニアバイスプレジデントを兼務)が会見で初めて説明に立った。冒頭の発言は、日本法人が社長人事を発表した際、「暫定マネージングディレクターとして社長執行役員に就任する」と表現していたことから、会見の質疑応答でその点を問われて答えたものである。
Hotard氏が会見で説明した事業戦略については関連記事をご覧いただくとして、ここでは戦略の前提となる市場トレンドの見方と、質疑応答での2つのエピソードを記しておこう。
まず、市場トレンドとしては表1を掲げ、「この表に示した7つが、今IT市場で起きつつある大きなトレンドだと捉えている」と説明。中でも強調したのは、「これからのIT市場は何事においてもデータが中心になってくる。ワークロードはデータがある近くのところで回すことが求められるようになる。そうでないと、十分なビジネス価値を得られなくなってしまう」ということだった。
市場トレンド(出典:日本ヒューレット・パッカードの資料)
質疑応答のエピソードとしては、「HPEの競合会社はどこか」、および冒頭の発言における質問として「あなたが暫定社長ならば、近く正式な新社長を決める予定なのか」という記者からの2つの質問に対するHotard氏の回答が印象的だったので紹介しよう。
競合会社については、「HPEは幅広い領域でビジネスを展開しているので、それぞれの領域で競合会社が幾つも存在する。ただし、どこを向いてビジネスを行うかということで言うと、競合会社ではなく、お客さまの要望や課題に常に目を向けていなければいけない。日本では、それに加えてパートナーエコシステムの拡充に注力することも重要だ」と回答。模範的な内容を力説するところに、米国本社の幹部としての手堅さを垣間見た。
そして、暫定社長を巡る質問については、少し笑みを浮かべながら、「哲学的な回答をするならば、人生においては何もかもが暫定だといえる」と話した上で、「とはいえ、私としては日本法人の社長を継続して務めていくつもりだ」と答えた。冒頭の発言は、このコメントから取ったものである。
会見全体から受けた筆者の印象では、日本法人社長としての立場を前面に出してはいたものの、米国本社の幹部としての雰囲気も端々に感じ取れた。46歳。キャリアも豊富だ。日本法人社長をどれだけ務めるか分からないが、米国本社で上り詰めていく人材だと感じた。