マイクロソフト、DX体験を強化する「Xインテリジェンス・センター」を本格展開

阿久津良和

2020-01-24 10:16

 日本マイクロソフトは1月23日、データ活用によるデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を支援する「X(クロス)インテリジェンス・センター」を本格稼働させたことを発表した。

 同センターは、2019年6月3日に設立された。当時、同社執行役員 常務 クラウド&ソリューション事業本部長 兼 働き方改革推進担当役員の手島主税氏は、「データやクラウド、エッジデバイスのスペシャリストで構成し、データの活用によるインテリジェンスの獲得を顧客とともに実現する」と説明。同社内にDX推進とデータ活用に向けた専任体制を設けて、探索的なアプローチによるプロジェクトの推進やデータ活用のアーキテクチャー検証、オープンデータの活用を目指す。

日本マイクロソフト 執行役員 常務 クラウド&ソリューション事業本部長 兼 働き方改革推進担当役員の手島主税氏
日本マイクロソフト 執行役員 常務 クラウド&ソリューション事業本部長 兼 働き方改革推進担当役員の手島主税氏

 情報処理推進機構(IPA)が2019年4月に公開した「デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査」の結果によれば、企業が現在取り組むDXの内容について、そのの要である「現在のビジネスモデルの根本的な変革」を挙げた回答者は38%、「企業文化や組織マインドの根本的な変革」は27.2%と低い。最も多いのは「業務の効率化による生産性の向上(78.3%)」で、業務プロセスの改善にとどまっている現状が浮き彫りになった。

 その理由としてクラウド&ソリューション事業本部 クロスインテリジェンスセンター クロステクノロジーアーキテクトの吉田雄哉氏は、「多くの顧客と接していると、企業内の情報システムを個別導入し、利用する傾向が見受けられる。部分最適のアーキテクチャーでデータはサイロ化し、属人化やステークホルダーの多さも日本独自の課題」と分析する。

企業内情報システムの課題(出典:マイクロソフト)
企業内情報システムの課題(出典:マイクロソフト)

 先の調査では、DXを推進する人材不足という状況も浮き彫りになった。デジタル担当役員(CDO)の設置状況はわずか3.3%で、情報担当役員(CIO)が兼任しているケースを含めても9.8%にとどまった。吉田氏は、「DX成功の鍵には『人』と『データ』に対する2つの取り組みが必要」と話し、“人”に対して部分最適から全体的なスコープに広げるアプローチと、個々の正解を探す探索的なプロジェクトが必要と訴える。

 一方の“データ”に対しては、データに着目したアーキテクチャーを導入することで対応する。同氏は、Xインテリジェンス・センターの狙いと説明した。具体的な活動は日本マイクロソフトと専任スペシャリストが顧客とともに事前説明やアイデアソン、ハッカソンを通じて「一緒に『知識・アイデア・実証』を実践」(吉田氏)し、具体的なDX実現の道筋を模索するという。

「Xインテリジェンス・センター」の概要(出典:マイクロソフト)
「Xインテリジェンス・センター」の概要(出典:マイクロソフト)

 また、クロステクノロジーアーキテクトの比嘉義人氏によれば、その取り組みでは顧客が持つデータを、デジタルフィードバックループの文脈で統合し、「全てのデータに着目する。製造業を例にすれば、デバイスから取得したデータで予防保守サービスや追加提案、現場サイドは保守点検作業の報告書をデータ化することで製品の改修や新製品の開発、社員データを使った働き方改革など、DX推進を最大化するシナリオを顧客とともに進めていく」(同氏)

 同じくクロステクノロジーアーキテクトの堺浩伸氏は、さらに「DX推進には統合的アプローチが必要」との観点から、企業内のあらゆるデータをデータレイクに統合しながら、分析を通じた分類や予測といった結果をデータレイクに書き戻し、データ活用を相乗的に高めると解説した。なお、同センターは「コンサルティングではなく、(顧客から見れば)無償のサービス」(手島氏)とのこと。パートナー企業としてはISAO、インフォマティカ、システムサポート、ジール、ブレインパッドの5社が参加する。

 同センターの事例では、電通デジタルの取り組みが披露された。電通が調査した日本の広告費(2018年)によれば、地上波テレビ放送は対前年比98.2%の1兆7848億円、インターネットは同116.5%の1兆7589億円で、2019年実績では逆転が確実視されているという。その背景から電通は広告代理店ではなくマーケティングソリューションプロバイダーへの変革を目指すという。

電通デジタル 執行役員 データ/テクノロジー領域担当の小林大介氏
電通デジタル 執行役員 データ/テクノロジー領域担当の小林大介氏

 2017年に取り組みを始めた「PDM(People Driven Marketing)」は、人間の理解に基づいたマーケティング手法である。2019年は顧客のCRM(顧客関係管理)システムと接続し、新規顧客の獲得と既存顧客の管理を目指すデュアルファネルに対応したPDM 3.0を発表、今後も幅広いデータ連携によるマーケティングソリューションを目指すという。電通デジタル 執行役員 データ/テクノロジー領域担当の小林大介氏は、「顧客企業のデータ基盤やIT基盤との連携が重要になるため、データ基盤を提供する日本マイクロソフトやパートナー各社との連携を深めたい」とし、マイクロソフトと電通デジタルの顧客企業に対して、新しい仕組みの提供を目指すと語った。

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