2025年に向けてDXを推進するIT部門の役割

第5回 DXの実装で参考にしたいテクノロジーの組み合わせ--BtoC編

石橋正彦

2020-01-08 06:00

 2019年の現在は、デジタルトランスフォーメーション(DX)がIT部門の耳に入るようになった。定義や捉え方は企業によって異なるが、五輪特需や大型プロジェクトの活況が終わった先の2025年は、本格的なDXの時代が始まるであろう。しかし、期待されるDXは全社レベルで検討すべきビジネスの話か、IT部門が検討すべきITの話か――これまでのDXの前身に当たる方法論をもとに、2025年に想定される事象をシミュレーションし、その先のIT部門の年齢構成の変化も読み解きながら、DX時代のIT部門の姿を全8回の連載で占う。第1~4回はDXのガバナンス、第5~8回はDXのテクノロジーがテーマだ。

 第4回では、IT部門に必要な2025年のDXに向けてのチェンジマネジメントを解説した。2025年に向け、いつでも撤退(縮小)できるようなITシステムの構築こそ、IT部門が経営に関与し、経費削減から経営に貢献できる機会との話をした。また、IT部門はDXのビジネスの開始時に全社レベルにリスクを提示する話もした。第5回以降は、テクノロジーの話を中心にする。

 まず、DXのテクノロジーとは何か。DXとは、モバイルやパブリッククラウド、ビッグデータ、IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)などのテクノロジーの組み合わせであることは間違いない。第5回ではテクノロジーでもBtoC(対消費者ビジネス)のケーススタディー、第6回ではBtoB(対法人ビジネス)のケーススタディー、第7回はDX化として「適用性」、第8回は社内システムのDX化をテーマに取り上げる。

セミナーで聞くDXの代表的なケーススタディーは「Uber」

 Uberは2009年に設立されたタクシーの配車と、市中の人が空き時間を使って自家用車でタクシー業務をする新しいビジネスモデルだ。ITの側面では、配車予約の部分、顧客と運転手が相互に評価するウェブの提供、さらに、グローバルで利用できるようにシステムが構築されている点などが特徴だ。

 売り上げが伸びている部分も参考になるが、テクノロジーを駆使している点も参考になる。ただ、本連載の観点からDXで見ておく部分は、彼らが適宜市場から撤退し、また、その決意も早い所である。例えば、2016年に中国から、2018年に東南アジアからそれぞれ撤退し、各種自動車事故なども経験し、コンプライアンス面でも重要な決断をしていた面がDXでは参考になる。このケーススタディーは、約10年の話だが、国内でも同じようなケーススタディーがある。

レクサスのモバイル/IoT/ビッグデータのテクノロジーの実装

 トヨタ自動車が、2005年から市中に高級車のブランドを普及させて来た「レクサス」のBtoCのケーススタディーは、ビジネスの撤退とテクノロジーの活用を保有する例だ。レクサスでは、2005年にGS350を市場に投入した際、モバイルのテクノロジーを利用している。具体的には、契約者であればヘルプネットへ緊急通報ができるテクノロジー、楽曲情報のデータサービス(Gracenoteなど)をG-Linkとして提供した(オプションでダイヤル指定の音声通話も可能である)。

 図10のレクサスの動向は、2005年にソアラ(レクサス名:SC430)、アリスト(同GS350)などがレクサスブランドに代わる際にG-Linkを搭載した点である。当時の運転者は、自分の携帯電話回線以外に、もう一台の携帯回線があったとは気がつかないだろう。ただ、車検の際に、G-Link費用(およそ2年間の通信サービス料金として)3万2593円(2019年現在)が徴収されている。

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