グリー(港区、グループ従業員数1712人)はロボティックプロセスオートメーション(RPA)の利用拡大で発生する課題を「JP1/Client Process Automation(JP1/CPA)」で解決したという。提供するアシストが3月12日に発表した。
2004年12月設立のグリーはゲームのほかにメディアや広告などの事業を展開。経理や会計の業務自動化や経費精算システム、稟議システムなどさまざまな業務システムのデータ連携手段としてRPAで開発したロボットを活用していた。
だが、ロボットの活用範囲が広がるにつれさまざまな課題が顕在化するようになっていたと説明する。導入したRPAはスケジュール実行ができず、「毎朝、起動ボタンを押す」という作業を人手で進めていた。問題なく動いているかどうかを1台ずつPCの画面を見る必要もあったという。
そのため「起動ボタンを押し忘れたらロボットが動かない」「エラー発見に気付くのが遅れれば、業務が滞る」というリスクを意識するようになっていたと説明。これらの作業はグループ会社に依頼していたが、担当者が台風のために出社できなかった時には実際に業務に支障が出てしまったこともあるという。
ロボットの中には重要なデータを扱うものもあり、担当者が本来見る権限のないデータが表示される場合でも画面で稼働状況を確認しなければならないなどガバナンス上の懸念もあったと解説する。また、シナリオ間連携時のタイムロスやロボットの実行完了を待ってからの手動業務など作業効率が悪いという課題も抱えていたとしている。
そこでグリーは、人手を介さずにロボットを運用管理する仕組みを検討、アシストが提案するJP1/CPAを採用した。JP1/CPAは、デスクトップ型RPAのロボットの実行やスケジュールを管理する製品であり、RPAメーカーが提供する管理ツールと比較しても、コストを抑制できることを評価。代表的なRPAツールとの動作や連携も検証済みであることから、将来的に別のRPAツールを導入しても同じ仕組みを使い続けられることも決め手になったとしている。
2019年9月から環境を構築し、1カ月間の検証作業を経て、11月には本番運用を開始した。スケジュール機能で自動的にロボットを起動し、完了通知もコンソールで参照できることで実行できないリスクやエラー検知が遅れるリスクを排除できたという。
夜間などの就業時間帯外にロボットを動かしておくことで出社してすぐに処理結果を確認してから後続の作業を手掛けられるようになるとともにエラー処理の調査に取りかかれるようになっている。シナリオ間のタイムロスが解消され、PC数台で分担していた業務も2台に集約できたという。
グリーは、「SAP ERP」システムのデータを「intra-mart」に連携するバッチ処理にジョブ管理「JP1/Automatic Job management System 3(JP1/AJS3)」を利用してきている。JP1/AJS3とJP1/CPAを組みあわせることでRPAのロボットをジョブの一つとして管理できるようになっている。RPAのロボットによる自動化から後続のバッチ処理まで一連の作業を全自動化できるようになっている。
グリーの担当者は「社内システムを運用する上で必要なデータ連携だが、クラウド側の制約、例えばAPI提供有無などがネックとなり、人が対応せざるを得ないことがある。その手が届かないかゆいところを補完する仕組みとしてRPAは非常に有効。半面、運用面まで考慮せずに本格利用すると、大きなトラブルにつながるかもしれない。RPAの特性を理解し、人手に頼らずきちんと管理できるかがRPA活用の明暗を分ける」とコメントしている。