水道管路のオンライン診断ツールを開発する米Fractaは、日本国内の水道事業体に向けてツールの提供を開始する計画だ。人工知能(AI)を用いて水道管路の劣化状態を診断し、水道配管の更新計画を最適化することができる。
Fractaは、2015年に創業したシリコンバレーのベンチャー企業で、水道管路の劣化状態を診断するオンラインツールを提供している。配管素材・使用年数、過去の漏水履歴といった水道管路に関するデータと、土壌・気候・人口などの環境変数を含むデータベースを組み合わせ、水道配管の破損確率を高精度に解析する。

Fractaのソフトウェア画面
水道事業体は、破損確率の高い水道配管から更新を行うことで管路整備におけるメンテナンスコストを最適化するとともに、配管の破損・漏水事故を最小限に抑えることが可能になる。同社のオンライン管路診断ツールは米国27州にわたる60以上の水道事業体に提供されているという。
日本国内では、2019年に神奈川県企業庁、川崎市上下水道局など6つの水道事業体で検証に着手。既に3つの水道事業体では検証を終え、米国での利用実績と同等の有効性が確認された。これを受け、今春から水道事業体に向けてツールの提供を開始する。また、日本国内での検証で得られた水道管の劣化パターンをAI技術に学習させることで、予測精度の向上も図る。
同社は、全国の膨大な環境変数を収集し、独自のアルゴリズムを構築している。そのため、水道事業体が保有する水道管の位置情報、材質、口径、設置年月、破損履歴といったデータをアルゴリズムに取り込むだけで、水道管の劣化状態の高精度な予測が可能になるという。
多くの水道事業体は、主に水道管の設置年数に基づいて水道配管の更新を行っており、配管周囲の環境が与える劣化への影響を十分に考慮ができないのが現状だといい、水道配管の破損確率を高精度に把握・分析することで、水道配管の交換における優先順位の明確化や更新計画の最適化へと導くとしている。
Fractaは、オンライン管路診断ツールを2022年までに100超の水道事業体に提供する計画だ。