鹿児島県の薩摩川内市(人口9万6076人)はハイパーコンバージドインフラストラクチャー(HCI)に基幹システムを含むほぼすべてのアプケーションを集約、2019年9月から本番稼働させている。ニュータニックス・ジャパンが4月2日に発表した。
同市はサーバーやストレージ、ネットワークという3層構造で構築した仮想環境に250を超える仮想サーバーを稼働させ、基幹システムのほかに認証基盤やセキュリティ基盤などを整備してきた。活用していたハードウェアの保守切れを契機に新しいITインフラ刷新プロジェクトを開始した。
新しいITインフラ刷新で念頭に置いたのが、LTO(Linear Tape-Open)テープでのバックアップを活用した災害復旧(DR)からの脱却。仮想サーバーのスナップショットをLTOテープに記録し、距離の離れた建屋に保管して万一の事態に備えていたが、データを戻す作業だけで1日を要することもあったと説明。住民サービスを安定かつ継続的に行うためにも、人手に頼らないDR環境が必要という。
薩摩川内市のような自治体では2~3年おきのジョブローテーションがあり、ITに詳しくない担当者でも運用しやすい環境も求められていた。同市の場合、ファイルサーバーが慢性的な枯渇状態にあり、不要あるいはアクセス頻度の少ないファイルやフォルダを整理する必要もあったことも課題となっていた。
パブリッククラウドも検討したが、自治体ではセキュリティポリシーの観点から特定の基幹システムをオンプレミスに残す必要があるとともに、通信コストも割高になることから、完全に移行することはできなかった。
比較検討の結果、薩摩川内市はNutanix製HCIを選んだ。複数のHCIが候補として挙がったが、クラスタごとに1つしかデータストアが作成できないものもあれば、新たな環境追加にダウンタイムが発生してしまうものもあったという。また、パッチ適用などの際に再起動が必要で、複数の管理コンソールを使い分けることで運用の負担が大きいなど、製品ごとにそれぞれ課題も散見されたとして、Nutanixにした。
新しいITインフラは2019年9月から本番稼働。本番環境に8ノード、DRサイトに3ノードを展開している。医療系を除く、住民記録や税金、福祉などさまざま業務の基幹システムを集約。加えてActive Directoryのほかにウェブやウイルス対策管理、資産管理、DNS、プロキシ、メールリレーといったサーバー、Windows Serer Update Service(WSUS)が「VMware vSphere」上で動作しており、仮想サーバーの数は250以上となっている。
クラウドストレージの「Nutanix Files」でファイルサーバー領域を柔軟に拡張、縮小できるようになっていると説明。従来の3層構造の仮想基盤では3つのラックを占有していたが、刷新後は実質的な容量が1ラックで構成されることで電源のランニングコストを軽減できているという。運用管理ツール「Nutanix Prism」でサーバー単位で状況を把握できるようになっている。
自治体として必要なインターネット分離については、VLANで論理的に分離している。DR環境については、プラットフォームソフトウェア「Nutanix Enterprise Cloud OS」に標準で搭載してるDR機能を活用、個別にサードパーティ製品を導入せずに運用している。DR環境からのリストアも以前はテープからのリストアで合計9時間必要だったが、今は5分もかからずに戻せるようになっていると説明する。
新しいITインフラはディスクI/Oも改善しているという。以前は取得した300GBほどのスナップショットを2時間かけて削除していたが、今は1時間以内に完了できるようになるなど、一部のサーバーではレスポンスが向上していることが実感できているという。またバッチ処理のプログラムも以前は3時間かかっていたものが、10分で完了していると説明する。