サイボウズの大槻氏は「紙による情報共有は、出社した社員のみ情報にアクセス可能。テレワークしている社員との間に情報格差が生まれる。情報はできる限りデジタル化してクラウドに保存する」とテレワークを実施する上でのコツを披露した。そんなサイボウズでも経費精算は領収書の原本が必要になるが、今回の新型コロナウイルス流行にあたっては、画像データによる提出へ時限的に変更した。
エイトレッドもペーパーレスを推進しているが、岡本氏は「契約書は紙になってしまう。管理部門に電子契約の検討を提案したところ『相手(企業)が紙を必要とする』といわれた」と自身の経験を語る。同社は経費増の懸念は残るものの、自らが変えなければ相手も変わらないとの判断から、電子契約システムの導入を進めていくという。
沢渡氏は契約書などのワークフローに伴う移動は、現状下において社会的リスクを伴うと指摘しつつ、「利害関係者が『紙・判子をやめよう』と声を上げていくべきだ」とまとめた。
「出社させ、会議をしたがる」昭和おじさん
メールはすでに当たり前のものとなっており、電話やファクスは過去の遺物に追いやられたと言えるが、今度はビジネスチャットツールの台頭により、メールが古いツールとして扱われるようになった。沢渡氏は「メールもコラボレーションツールの1つ。だが、素早く相手とつながって価値を生み出すという観点では阻害要因となる」と指摘した。
確かにメールは記録として有用だが、コラボレーション時はタイムラグが発生する。グループウェア「Garoon」などを展開するサイボウズの大槻氏は「メールでは同僚や別部署の動きが見えてこない。だから、昭和のおじさんは社員を出社させ、会議をしたがる」と、テレワークが浸透しない理由を説明。その上でクラウド上にオフィスを再構築することで、テレワークが推進できると持論を語った。
エイトレッドは今回のテレワーク時に「Zoom」を使って1対1ミーティングを実施したところ、コミュニケーションに課題を感じる社員が多かったという。
同社はこれまで部門ごとに業務利用するチャットツールが「ある部門はChatwork、ある部門はSlack、ある部門はChatter」(岡本氏)と異なっていた。統一を試みたものの現場からは反対意見が多く一度諦めたが、現況のテレワーク時は全員が賛成。同社社員はツールが異なると、互いのコミュニケーションが取れないことを身をもって体験したからだ。岡本氏は「実体験から変えていくことが大事」だと自身の経験を披露した。