ドイツは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大防止を目的とするモバイルアプリの開発をめぐり、収集データを一元管理するスタンスから方針を転換した。
ドイツ政府は最近まで、ユーザーがどこに行き、誰と会ったかといった位置情報をモバイルアプリで収集し、そのデータを1カ所に保存するコンセプトを支持してきた。
人権およびプライバシーの擁護団体に批判されているこのコンセプトの問題点は、この種の情報にアクセスできる組織に政府機関、あるいはおそらく法執行機関が含まれる可能性があるため、膨大な市民データの収集が将来的に、それまで西側諸国ではあり得なかった規模での監視に道を開くおそれがあることだ。
ドイツはこれまで、「Pan-European Privacy-Preserving Proximity Tracing(PEPP-PT)」システムと呼ばれる集中型アプローチを支持していた。フランスは先週、Appleに対して、「iPhone」のBluetoothに関する現行のセキュリティ管理において、データを端末の外へ出さない仕組みを緩和するよう要請した。
現行の仕組みの下ではPEPP-PTに基づくアプリが機能しないが、Appleはモバイルセキュリティの基準を引き下げることに前向きではない。
そのため、PEPP-PTアプリに市民データを集中管理するシステムを組み合わせるドイツの計画も実行不可能となった。その結果、ドイツは独自アプリの開発に向けたこれまでの計画を断念し、AppleおよびGoogleが支持する分散型アプローチを採用するとReutersは報じている。
Appleの譲歩を得られない以上、「方針転換するほかに道はなかった」と政府関係者はReutersに語っている。
ドイツの首相府長官Helge Braun氏および保健相Jens Spahn氏は現地時間4月26日、今後は分散型アプローチを追及する意向を明らかにした。
しかし、フランスと英国は今なお集中型アプローチによる追跡を模索している。英国政府はBluetoothを使ってアラートを発するアプリを開発しているが、症状に関する匿名化されたユーザーデータに英国民保健サービス(NHS)がアクセスできるようにする方針だ。しかし、アプリのセキュリティとデータ収集をめぐる明確さと透明性が十分でなく、導入に関してすでに批判や懸念の声が上がっている。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。