ビデオ会議サービスのZoomが、中国の顧客への直接販売を近く中止することを明らかにしている。同社のサービスを継続的に利用したい中国の顧客は、現地のパートナー企業を通じて利用することになる。
中国のユーザーは現地時間8月23日より、Zoomから直接製品を購入できなくなるが、Zoomは同社の技術を利用したサービスを提供する、中国の正規パートナー企業を何社か挙げており、Bizconf Communications、Suirui Zhumu Video Conference、Systec Umeetなどが含まれると報じられている。
同社の広報担当者は、「中国本土における当社の市場参入モデルには、直接販売、オンラインサブスクリプション、パートナー企業を通じての販売があった。今後はパートナー限定モデルに移行し、Zoomの技術を組み込んだパートナー企業のサービスを提供していく。これにより、中国のユーザーにより優れた現地サポートを提供できると考えている」と述べた。
広報担当者によると、中国本土のユーザーは今後も、Zoom会議に参加者として加わることは可能だ。
同社は5月に、中国における新たなユーザー登録を法人顧客に限定したとされており、同国のユーザー基盤と距離を取り始めている。無料版の既存ユーザーは会議に参加できるが、会議を主催することはできなくなったようだ。
Zoomは米国で設立された企業だが、最高経営責任者(CEO)Eric Yuan氏が中国出身であることから、中国とのつながりが厳しく追及されるようになった。
米上院議員のJosh Hawley氏とRichard Blumenthal氏は7月、ZoomとTikTokに関する書簡で、Zoom本社は米国にあるものの、アプリケーションは少なくとも中国の3社によって開発されており、中国で少なくとも700人の従業員が研究開発に携わっているようだと指摘した。
両氏は「司法省が、ZoomとTikTokのビジネス関係、データ取り扱いの慣習、中国との業務上のつながりが、米国人にリスクをもたらすかどうか調査して、判断することが不可欠だとわれわれは考えている」としていた。
4月にはZoomは、暗号鍵が中国のサーバーを経由して送られていた可能性があると報告されていた。この件を明らかにしたカナダの研究機関Citizen Labは、Zoomが法的に、これらの暗号鍵を中国当局に開示することを余儀なくされる可能性があるとしていた。
Eric Yuan氏は、新型コロナウイルスの流行による中国地域での需要増に対応するために、プラットフォームの容量を急いで追加した際に、この問題が起こった可能性があると認めている。しかしYuan氏は、中国国外のデータが中国を経由するのは、「極めて限られた状況下のみ」だと強調した。
またZoomは6月、中国政府の要請を受けて、民主化を推進する人権団体のアカウントを停止したことで、非難の矢面に立たされた。この出来事により、Zoomプラットフォームが、中国での検閲を支持する可能性があるという懸念が浮上した。
その後、そのアカウントは復旧したが、同社は現地当局の要請に順守する際の、よりよいルール作りが必要であることを認めた。
「Zoomは今後、中国政府からの要請が中国本土以外のユーザーに影響を与えないようにする」(同社)
こうした一連の流れから、同社が中国本土で直接販売を中止するという決断は、同国とのつながりを弱めるための取り組みを強化しているためだと考えられる。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。