日本IBMは「IBM Family Day 2020」を開催した。同社は、2000年から全国主要都市の事業所ごとに社員の家族を会社に招待する「IBM Family Day」を行ってきたが、新型コロナウイルス感染症の影響もあり2020年は初めてオンラインで実施された。「デジタルで『つ・な・が・る』」をテーマに、2部構成・約40のプログラムを用意、社員と家族が自宅にいながら一緒に楽しめる内容とした。
コンテンツの配信は、同社が日常の会議などで使用しているWebexで行った。また、この日に開催された各プログラムに参加できなかった社員や家族には、後日その内容を視聴できるようにしている。
午後12時半に開始された第1部の「Family Town Hall」では、まず代表取締役社長の山口明夫氏が登場、「今日は皆さんに自宅から参加し、600人以上の子供たちが参加している。北海道から沖縄、中国、シンガポール、オーストラリア、台湾からも社員と家族が参加している」と述べた。
いつもより穏やかな表情であいさつする日本IBMの山口明夫社長
その後は子供たちに語りかけるように、「今は、オンラインを活用して世界中の人がつながりながら仕事をしている。お父さんやお母さんは、みんながもっと安全に、もっと便利に暮らせることを考えたり、新型コロナウイルスへの対策を考えたりしている。家にいながら電車を安全に動かしたり、銀行のATMからお金が引き出せるようにシステムを動かしたり、お店のレジを動かすシステムを作ったり、生活が継続できるようにがんばっている。会議で大切なことを決めて、世の中の役に立つようにがんばっている」などと語った。
また、「お父さんやお母さんが家の中でPCを使って仕事をしていることが気になるかもしれない。もし気になったら、PCの横からのぞいて見て、どんな会議をしているのか、どんな話をしているのかを聞いてみよう。ちょっと顔を出して会議に出てくれたら、うれしいと思う」などと話しかけ、在宅勤務ならではのサプライズを歓迎した。
さらに、社員から聞いた話として、大人を対象にした在宅勤務のエピソードも披露した。「ある男性社員によると、オンライン会議でリーダーシップを発揮し、会議をまとめている姿を奥様が見ていたようで、『300倍ぐらいほれなおしたと言われた』と報告があった。どういう形で仕事をしているのかが家族に伝わるのもリモートワークのメリット。だが、この話を聞いて“のろけ”以外のなにものでもないと思った(笑)」とも話した。
最後に山口氏は、「今日はさまざまなプログラムを用意している。ぜひ夏の思い出にしてほしい」と参加している子供たちに呼びかけた。
山口氏のあいさつに続いて、東京・箱崎の本社オフィスの様子がレポートされた。社員がカメラを持って誰もいないオフィスを実際に歩きながら、さまざまな新型コロナウイルス感染症対策を行っていることを説明。エレベーターでは離れて5人まで乗れるように区画を用意していること、ビルの換気設備が1時間に2回外部の新鮮な空気と入れ替わるように24時間稼働していること、社員が出社した場合に1日2枚ずつマスクが提供され、使い終えたマスクを新設の専用ごみ箱に捨てる仕組みになっていることなどを紹介。社員がいつオフィスに戻ってきても安心して仕事ができるようにしている。
本社オフィスの様子を紹介した
なお、今回の進行役を務めた女性社員は4月に入社したばかりで、まだ一度も本社オフィスに出社していないという。
その後は京都、中国、シンガポールで働くIBM社員を結んだリレートークを行い、それぞれが近況を報告。さらに、社内の人気研修イベントをIBM Family Day向けにリメイクした「IBMの仲間とお仕事」と題する社員や家族が参加できるプログラムを実施した。
同社の産業医である砂田健一氏による「IBMの新型コロナウイルス感染症対応と感染予防策」と題したセッションでは、日本IBMが1月21日に新型コロナウイルスの危機管理チームを招集し、1月31日には在宅勤務を奨励、4月1日にこれを要請レベルに引き上げた一連の対応内容を紹介。また、3月20日には特別有給休暇を導入、6月18日にはソーシャルディスタンスのための職場環境づくりを開始したことも報告した。ここでは、感染予防の際に注意しなくてはならないことやエクササイズプログラムをオンラインで配信し、社員の健康に支援していることも紹介した。
午後2時~午後5時45分に行われた第2部は、4つの時間帯と、「テクノロジー」「音楽&クイズ」「スポーツ&健康」「馬術部」などの9つのチャンネルに分けて、家族で参加できる双方向コミュニケーション型のプログラムを実施、札幌や沖縄事業所など全国の社員ボランティアが企画をしたという。未就学生児向けの「英語で歌おう! みんなでパプリカ」や、小学生向けの「トライサイエンス実験教室『ロボットに命令しよう』」などが用意され、それぞれのプログラムは未就学児、小学生低学年、小学生高学年、中学生、高校生、大学生、大人に色分けされて参加対象者を表示し、子供たちが選びやすくしていた。
人気セッションの1つが、テクノロジーチャンネルに用意された「夏休みの自由研究『量子テレポーテーションの実験』」だ。中学生から大学生を対象とした内容で、量子コンピューターの仕組みを学びながら、量子の状態のデータを送信できる量子テレポーテーションを体験した。講師は、「夏休みの自由研究のテーマが決まっていない子供には最適なテーマ」と呼びかけた。
量子テレポーテーションのセツションでは、IBMの量子コンピュータ「IBM Q」を紹介
参加した社員からは、「家族と仕事の話をしたり一緒にアクティビティーを楽しんだりするとても良い機会だった。コロナ禍でレジャーにも行けない子供たちに楽しい思い出を作ってもらえたのは良かった」「子供に親の仕事を知ってもらい、親の会社の社長に会えて、大人の世界を味わえるといったさまざまな面で子供に刺激を与える場。子供にとって良い経験になる」といった声のほか、オンラインでの開催については、「遠方の方々にも気軽にPC上で参加できるのはとても良い」「暑い夏に出かけることもなく職場を見られたのは面白い試み。遠方にいる子供や体が不自由な両親も参加できる」などの声が挙がっていた。
また、「現在はお客さま先に常駐しており、在宅勤務は週1回のみという状況のため、あまり不便を感じておらず、精神的にもそれほど変化はないと思い込んでいた。しかし、オープニングの各拠点からのメッセージを見て、なぜか涙があふれてきた」という声も聞かれ、Family Dayならではの企画を通じて、社員同士がつながったことに感動した社員もいたようだ。