モバイルでのPDFの読みづらさを解消--「Liquid Mode」から見えるアドビの狙い

阿久津良和

2020-09-30 06:45

 アドビは9月29日、記者向けオンライン説明会を開催。モバイルデバイスでのPDFの閲覧環境を人工知能(AI)で最適化する機能「Liquid Mode(リキッドモード)」を解説した。

 米国本社が米国時間9月23日に発表したPDFの可読性を高めるLiquid Modeは、「Adobe Acrobat Reader」モバイル版アプリの機能であり、同社のAI技術「Adobe Sensei」でPDF内の見出しや章、段落、図表や本文を適切にタグ付けし、モバイルデバイスの画面に最適化する。

 同日時点では、英語に代表されるシングルバイトのみ対応し、日本語は未対応。日本法人マーケティング本部 デジタルメディア ビジネスマーケティング 執行役員 北川和彦氏は「スケジュールは未定だが、2021年中には対応したい」と説明する。

 Adobeが8月10~21日に日本のビジネスパーソン1007人を対象にした調査によれば、モバイルデバイスでの文書閲覧時の平均ページ数は、大半を占める49%が5ページ以下。文書閲覧時の不満としては「表示領域が狭い(54%)」「拡大縮小が面倒(42%)」「アップロード・ダウンロードに時間がかかる(33%)」といった声が集まったという。

 同様の調査は9月に米国でも実施し、米国人の65%がフラストレーションを感じているそうだ。この課題を解決するのがLiquid Modeだとアドビは説明する。

 改めて説明するまでもなく、PDF最大の特徴はレイアウトの保持にある。Microsoft Wordなどで作成した文書ファイルをPDF化することで、制作者が意図したレイアウトを崩さず相手に提供することが可能だが、数インチのディスプレイを備えるモバイルデバイスでは、その特徴が欠点となってしまう。ピンチイン、ピンチアウトなどの操作で表示部分を拡大しなければ、文章を読むのも一苦労だ。

 他方でPDFは文章や画像といったデータをクロスリファレンステーブルで管理しているものの、その構造を把握するには人の理解力が必要である。この部分を代替するのがAdobe Senseiだ。

Liquid Modeの概要 Liquid Modeの概要
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 iOS/Android用のAcrobat Reader上部に並ぶ、水滴のようなアイコンをタップすると、PDFに含まれる見出しや章、段落、図表や文章といった文書構成要素をAdobe Senseiが解析してタグ付けし、モバイルデバイスに応じて配置を最適化する。

 Liquid Modeについてデジタルメディア事業統括本部 営業戦略本部 ドキュメントクラウド戦略部 製品担当部長 昇塚淑子氏は「ウェブブラウザでHTMLドキュメントを読んでいる状態を実現」と説明。対応OSはiOS 12.xとAndroid 5.0以降となるが、日本語環境ではLiquid Modeのアイコンは現れない。

 デモンストレーションでは目次構造の自動生成や手動によるフォントサイズ、行間や字間の調整も披露した。また、PDF内の脚注をポップアップさせる機能も含む。米国本社の説明によれば、デスクトップやウェブブラウザーにも順次提供するという。

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