海外コメンタリー

アストラゼネカが「Microsoft Azure」と「PyTorch」活用、高度な機械学習で創薬を効率化

Daphne Leprince-Ringuet (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2020-10-09 06:30

 Facebookのディープラーニングフレームワークである「PyTorch」は、数年前にリリースされて以来、Elon Musk氏の自動運転車やロボット農場プロジェクトなど、さまざまな用途に使用されてきた。

 さらに製薬大手AstraZenecaは、社内のエンジニアチームが、PyTorchを使用した創薬の簡素化とスピードアップを図っていることを明らかにしている。

 AstraZenecaの技術は、PyTorchと「Microsoft Azure Machine Learning」を組み合わせて使用することで、大量のデータを処理して、薬、疾患、遺伝子、タンパク質、分子などの間にある複雑なつながりに関する、新たな知見を獲得するものだ。

 それらの知見は、研究者が実験室で試験を行う創薬ターゲットを推奨するアルゴリズムの構築に利用されている。

 この手法は、創薬などの分野に大きな進歩をもたらす可能性がある。創薬の分野ではこれまで、経費が高く時間もかかる、試行錯誤を繰り返す手法が使われてきた。

 通常、特定の疾患に有効な新薬を開発するためには、有効な解決策が見つかるまで、実験室でさまざまなタンパク質の設計やその組み合わせの試験を行う必要がある。この過程に時間がかかるため、薬に関するアイデアが生まれてから、実際にその薬が世に出るまでには、10~15年かかることもある。一方、AstraZenecaのアルゴリズムは、特定の疾病の治療に関して有望な、研究者が優先的に試験するべき創薬標的のトップ10をずっと短時間で特定することができる。

 研究者が研究を進めるためにアクセス可能なデータの量は、毎年指数関数的に増加しているため、創薬に自動化を導入することは極めて有用だ。日々大きくなるデータベースを分析して、それらの情報が創薬にどう役立つかを理解する作業は、人間の能力を超えている。

 AstraZenecaの機械学習エンジニアであるGavin Edwards氏は、米ZDNetの取材に対して、「研究者が利用できる科学情報やデータの量は、毎年大幅に増加している。PyTorchなどのAIや機械学習のためのツールやAzureを利用することで、複数の情報源から得た情報を素早く抽出し、組み合わせて、解釈することができる。その狙いは、同じデータを手動で分析するよりも短時間で、優れた科学的な結論を引き出すことだ」と述べた。

 利用可能なデータの多くは構造化されていない情報であり、そこにPyTorchの出番がある。PyTorchは、プログラミング言語のPythonをベースとするFacebookが開発したオープンソースの機械学習ライブラリーであり、特にコンピュータービジョンや自然言語処理のような分野の、膨大な量のデータサイエンスの処理を行うのに向いている。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    セキュリティ担当者に贈る、従業員のリテラシーが測れる「情報セキュリティ理解度チェックテスト」

  2. セキュリティ

    サイバー攻撃の“大規模感染”、調査でみえた2024年の脅威動向と課題解決策

  3. セキュリティ

    従業員のセキュリティ教育の成功に役立つ「従業員教育ToDoリスト」10ステップ

  4. セキュリティ

    IoTデバイスや重要インフラを標的としたサイバー攻撃が増加、2023年下半期グローバル脅威レポート

  5. セキュリティ

    急増する工場システムへのサイバー攻撃、現場の課題を解消し実効性あるOTセキュリティを実現するには

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]