「共感モニタリングサービス」が実現するユースケースとは
以上が発表の概要だが、今回このサービスに注目したのは、「共感」がこれからのビジネスや従業員エンゲージメント、さらには社会生活全般にわたって重要なキーワードになると見ているからだ。
筆者が共感という言葉を意識し始めたのは、2年ほど前に「共感マーケティング」について取材したのがきっかけだ。当時、SNSなどネット上でのインフルエンサーを介したマーケティング手法が注目されるようになってきていたが、そのベースにあるのが共感だった。共感マーケティングは、そうした共感の動きを科学的見地からビジネスモデルにしようというアプローチだと認識している。
さらに、今年に入ってからはとくに新型コロナウイルス感染症の拡大を受けてビジネスの在り方や働き方が大きく変化し、共感がこれまでにも増して注目されるようになってきた。
日立によると、企業においては自社の理念をはじめとしたメッセージへの共感が、組織の一体感や従業員の働きがいを高め、パフォーマンスの向上や離職率の低下などにもつながることが学術研究において立証されているという。コミュニケーションの機会が減少する中でも組織としての一体感を高め、企業の目指すべき方向や価値が共有された強い組織風土を構築することが、これまで以上に重要となっているわけだ。
その意味で、今回の日立の共感モニタリングサービスは興味深い内容である。せっかくなので、もう少し利用シーンがイメージできるように、新サービスを説明している日立のサイトからユースケースを2つ挙げておこう。
1つは、理念やメッセージへの共感による一体感のある強い組織づくりだ。(図2)
図2:理念やメッセージへの共感による一体感のある強い組織づくり(出典:日立製作所)
従業員へのメッセージに対する共感度合いを可視化し、より共感を生む内容に改善していくことが可能だ。これにより、従業員がビジョンに共感し、モチベーションと一体感を持って働ける組織づくりを支援する。また、従業員に定着している価値観を可視化し、その組織らしさを伝える表現を把握することで、企業理念を明文化することにも役立つ形になる。
もう1つは、オンラインでも双方向性のあるコミュニケーションを実現できることだ。(図3)
図3:オンラインでも双方向性のあるコミュニケーションを実現(出典:日立製作所)
オンラインでの大人数に向けたセミナーやプレゼンテーションでは、聴講者の反応が見えづらく、一方的な発信になりがちだ。新サービスを活用することで、聴講者がリアルタイムで気軽に反応をフィードバックでき、発表者や聴講者は周囲の反応を把握することが可能となる。これにより、双方向のコミュニケーションが成立し、発表者はより共感を生むメッセージ発信につなげることができるようになる。
改めて強調しておきたい。「共感」はこれからの時代の重要なキーワードになるだろう。