日本IBMは10月22日、同月8日に発表されたマネージド・インフラストラクチャー・サービス部門の分社化と新会社設立についてのオンライン説明会を開催した。米IBM 社長のJim Whitehurst氏と日本IBM 代表取締役社長の山口明夫氏が登壇し、今回の発表の意図や両社の展望を明らかにした。
IBMは、10月8日にグローバル・テクノロジー・サービス事業のマネージド・インフラストラクチャー・サービス部門を分社化し、業界最大手の次世代マネージド・インフラストラクチャー・サービス企業を設立する計画を発表している。
米IBM 社長のJim Whitehurst氏
Whitehurst氏によると、新会社(現在はNewCoと呼ばれており、正式名は後日発表される)はマネージドインフラサービスの世界最大手になるという。インフラストラクチャー管理とモダナイゼーションに注力し、115カ国でFortune 100企業の75%以上を含む4600社を超える顧客と取引をすることになる。新会社は5000億ドルの市場機会があり、190億ドル近くの売上規模になると見込まれている。
世界9万人の優秀な人材が幅広いノウハウ・知識を有し、より効率的なオペレーティングモデルを確立していくとする。また、新会社はIBMとの戦略的パートナーシップを維持する一方で、さまざまなクラウドベンダーとの協業も検討していくという。分社化は2021年末までに完了する予定。
IBMは、1兆ドルの市場機会に相当するオープンなハイブリッドクラウドプラットフォームにフォーカスしていく。「AI(人工知能)を使ったソフトウェアポートフォリオ、クラウドトランスフォーメーションサービス、グローバルビジネスサービス、ハードウェア、セキュリティ、パブリッククラウドなど、フルスタックな製品群を提供する」といい、「今回の分社化によって財務的にも自由度が生まれ、ハイブリッドクラウドやAIといった成長市場への投資を強化し、イノベーションを加速させていく」と強調した。
日本IBM 代表取締役社長の山口明夫氏
日本IBMの山口社長は、グローバル・ビジネス・サービス(GBS)事業、グローバル・テクノロジー・サービス(GTS)事業、システム事業、クラウド&コグニティブ・ソフトウェア事業という4つある製品事業のうち、GTS事業内にあるインフラストラクチャー・サービス部門がグローバルとともに新会社として独立すると説明。
「基盤と業務を一緒に提供していくのがこれまでのシステムインテグレーターとしての役目だった。しかし、5G(第5世代移動体通信システム)をはじめとする技術進化や新型コロナウイルス感染症の拡大により、デジタル変革(DX)がより一層加速する形になった。マルチクラウドやハイブリッドクラウド、ハードウェア、ネットワーク、IoTなどがプラットフォームとして社会全体で横ぐしに広がってきた。顧客からはその全体を管理することへのニーズが高まってきた。アプリケーションとインフラストラクチャーを垂直統合する従来の方法から、もっと水平方向に管理することで、より安定した企業基盤や社会基盤を提供することが重要であると考え、分社化するという決断に至った」
さらに、両社が協業することで、「Red Hat OpenShift」をベースとした“プラットフォームフリー”の業務基盤と他社クラウドを含めたインフラ基盤を提供でき、「顧客の要望に一番応えられるモデル」(山口氏)だという。
IBMは、セキュリティやAI、量子コンピューター、ハードウェア、クラウドなどより市場価値の高い製品の開発、販売、保守に注力していくと語った。