ブロックチェーンを中心テクノロジーに据えるカタルーニャ州の狙い

佐藤友理

2020-10-30 07:30

カタルーニャ州が注目するテクノロジー

 スペインからの独立を目指すカタルーニャ州。同州はブロックチェーンをはじめとするテクノロジーを公的サービスの中で積極的に活用しようとしている。

 カタルーニャ州政府でイノベーションやデジタル経済などの分野でディレクターを務めるDaniel Marco氏が9月にオンラインで開催されたイベント「European Blockchain Convention」(EBC)に登壇し、同州のデジタル戦略を語った。

 カタルーニャ州は「今後成長するテクノロジー」としてIoT、ビッグデータ、サイバーセキュリティ、3Dプリンティング、拡張現実/仮想現実(AR/VR)、ロボット、ドローン、ブロックチェーン、人工知能(AI)、5G、ニュースペース、量子コンピューティングを選出している。

 同氏は「これらをつなげることで本当のインパクトが生まれます。そしてもちろん人間、環境、そして子どもたちともつなげなければいけません」と強調する。

 しかし、これらのテクノロジーがすでに存在する一方で、活用は思うようには進んでいない。

 同氏によると、その原因は「テクノロジーの成長速度と人間の成長速度の差」にあるのだという。テクノロジーがここ数年で発達、開発されていく中、人間がそれに適応できていないのだ。しかし、ここ数カ月のコロナ禍は人間のテクノロジー適応を押し進めた。

 「コロナ対策としてリモートワークが広まり、ヘルスケア分野でのリモートアシスタンスも広まりました。この半年で起きた変革は、コロナがなければ数年かかっていたであろう変革です。今こそ社会の各セクターを支援すべき時なのです」(Marco氏)

テクノロジーを成長させるための「3つの国家戦略」

 また、カタルーニャ州は5G、AI、ブロックチェーンを中心的なテクノロジーと位置付けている。

Daniel Marco氏
Daniel Marco氏

 同氏によると、あらゆるものがインテリジェントにつながる今、広帯域で遅延を減らし、コンピューティングを可能にするキャパシティを実現するには5Gのコネクティビティが不可欠なのだ。

 また、AIは今後のビッグデータ分析で必要だと同氏は語る。プロセスを自動化し、効率化するためにもAIの重要性が増すからだ。

 そしてブロックチェーン。同氏はブロックチェーンをインターネットやデジタル空間の新しいガバナンス方法として捉え、ブロックチェーンが市民をエンパワーすると見ている。さらに「ブロックチェーンは企業規模や市場におけるパワーにかかわらず、企業に平等な機会を与える」と語る。

 「ブロックチェーンは特に公共団体としてのカタルーニャ州に関わるものです。ブロックチェーンはデジタル空間におけるトランザクションを民主化します」(Marco氏)

テクノロジー活用を進めたい6分野

 同氏によると、カタルーニャ州がブロックチェーン活用を進めようとしている分野が6つある。政府、エコシステム、規制、プロモーション、人材、イノベーションだ。パブリックとプライベートの両方のセクターでの活用促進を目指している。活用促進の基盤になるのがエコシステムだ。

 「2020年3月現在でカタルーニャ州のエコシステムには76の企業が参加し、400の雇用が創出されました。18ヶ月前時点での参加企業数は40でした。これらの企業の多くが従業員数5人前後の小規模な企業です。カタルーニャ州のエコシステムは急速に成長しています。パブリックセクターがテクノロジー活用を進めるには、企業と近いところにいなければなりません。近ければパブリックセクターでテクノロジーを適用する際、企業からサポートを得られるからです」(Marco氏)

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