重要なのはアジャイル--ローコード開発から見える情報システムの現状 - (page 2)

阿久津良和

2020-11-20 06:30

専任CIOは3%、兼任含めても14%

 OutSystemsジャパンのパートナー企業であるBlueMeme(千代田区) 代表取締役 松岡真功氏は「日本国内のアジャイル開発が遅れている理由は自前主義、外部ベンダー企業への依存、CIO(最高情報責任者)設置率の低さの3点にある」と指摘した。

 「日本情報システムユーザー協会(JUAS)の『企業IT動向調査2020』によれば、専任CIOを設置する企業はわずか3%。金融業界のみ18%を超えている。兼任を含めると約14%だが、金融業界は約39%と突出して高い」(松岡氏)

 さらに日本企業はCIOが整備したエンタープライズアーキテクチャー(企業の設計書)を持たず、提案依頼書(RFP)によって技術とベンダーを選定してから要件定義を実施するため、システム設計や機能実装時に手違いが発生すると松岡氏は指摘した。

 米国企業はエンタープライズアーキテクチャーを最初に用意し、要件定義から開発に用いる技術を選択するため、日本企業のような工数増加といったトラブルが発生しないという。

レガシー環境をマイクロサービス化

 BlueMemeはAPI統合基盤を利用し、前田建設工業(千代田区、単体従業員数3161人)の業務アプリケーションを再開発することなくマイクロサービス化することで、アジャイルかつ低コストのシステム統合を実現したという。さらに基幹業務システム用ウェブアプリケーションをOutSystemsで開発するなど、変化が著しいフロントエンド技術の活用を可能にしている。

 2019年1月に創業100周年を迎えた前田建設工業は、総合インフラサービス企業への変革を実現するため、先進ベンチャーとの共創など多様な取り組みを続けてきた。また、建設業界にも押し寄せるデジタルトランスフォーメーション(DX)の波を乗り切るため、業務プロセスやルールを見直し、システムやデータ整備、IT人材育成に取り組んでいる。

 その一環として着手したのが、1993年に導入した「Lotus Notes」と内製アプリケーションの刷新だった。前田建設工業 情報システム総合センター長 廣田憲治氏はその理由として、「Notes導入以来、約3500ものデータベース(DB)が存在し、属人化やサイロ化、サーバー老朽化が進み、他システムとの連携が困難だった」という。

 同社はDB更新状況や閲覧状況をもとに分類して、移行対象を約1000アイテムに絞り込み、OutSystemsで約200のアプリケーションと6つの汎用アプリケーションを新規開発した。

 OutSystemsを選択した理由として廣田氏は「クラウドネイティブ指向やローコード開発によるアジャイル開発との親和性、DevOps機能を用いた開発から展開まで一気通貫できる。社内の内製開発に効果的だった」ためだと述べた。

 今後は、JavaのGUIツールキット「Swing」、EJB(Enterprise JavaBeans)、オブジェクトデータベースで稼働している基幹システムのマイクロサービス化を目指している。

前田建設工業とBlueMemeによるアジャイル開発体制 前田建設工業とBlueMemeによるアジャイル開発体制
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