藤井氏はS/4HANAの進化にも触れて「最新版は新しいデジタル基盤になるために生まれ変わった。ERPが予測や最適化をレコメンドする世界が実現している」と述べながら、入金消込の自動化や予測分析を利用することで不正に対するアラート精度の向上、調達契約の消化具合を予測することで、事前の契約更改を実現し、在庫転送の遅延状況を予測して生産のリスクを回避するなど、多くの機能を備えたと主張した。S/4HANAは四半期ごとのアップデートを予定しているため、多くの機能は常に改善される。
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前述したi-ESMは、ERPに加えて機械学習を活用した人工知能(AI)やロボティックプロセスオートメーション(RPA)などの導入短縮化を目的にしている。i-ESMの中堅企業展開に関しては、組立製造業や自動車部品業、化学といった各業界向けのS/4HANAの導入費用・期間のモデルケースを提示。データ移行サービスも提供する。また、発表済みのパートナーテンプレートモデルを生かして、パートナー独自オプションを加えたサービスを提供する。
同モデル発表時のパートナー企業は3社だったが、現在はDXCテクノロジー・ジャパン、NTTデータ グローバルソリューションズ、SCSK、SHIFT、TIS、アイ・ピー・エス、コベルコシステム、テクノスジャパン、デロイト トーマツ コンサルティングと10社まで拡大している。
古林紙工 取締役 副社長執行役員 営業本部長 古林雅敬氏
2020年からS/4HANA Cloudを採用しているという古林紙工(大阪市中央区) 取締役 副社長執行役員 営業本部長 古林雅敬氏が記者会見に登壇。30~40年前から汎用型システムを導入していたものの、日々の伝票処理が難しかったと説明。バッチ処理からリアルタイム処理に移行するには社内開発だけでは限界があったと古林氏は振り返る。
現在のシステム導入に伴い、業務プロセスの可視化とリアルタイム化に成功したという結果について古林氏は「中小企業は大企業と異なり、時代に流されがち。小さいながらもスピードを生かしてDXに取り組む」と述べた。