2020年は、私たちの生活様式を一変させた新型コロナウイルス感染症の世界的拡大(パンデミック)から、東京オリンピック・パラリンピックの延期、キャッシュレス決済によるQRコードの普及まで、誰もが予測できなかったことが数多くありました。世界中の広告主は十分に計画されたマーケティング戦略ではなく、これらの絶え間なく変化する状況に対応することを強いられており、日本のマーケターもコロナ禍の影響により、急速な変化に対応したマーケティング戦略を求められています。
2020年10月にCriteoが実施した、日本のCMO(マーケティング部門の責任者)やデジタルマーケティング担当責任者、リージョナルマーケティングディレクターを含む100人を対象とした調査レポート「State of Ad Tech 2021」によると、コロナ禍でマーケティング・広告戦略を「大幅に変更した」と回答した割合は21%、「ある程度の調整を行った」は73%を占めました。
また50%近くが、デジタルマーケティングキャンペーン、マーケティング予算の最大活用、新製品やサービスのリリースについて計画通り進行していると回答している一方で、野外広告を用いたマーケティングキャンペーンやイベント開催、展示会への出展は計画通り進行していると回答した割合は少なく、新型コロナウイルス感染症の影響が見受けられます。
2020年第3四半期においてはデジタル広告キャンペーンを実施するに当たり「アプリリターゲティング(アプリユーザーへのリターゲティングによる売上拡大)」を重要な要素とする回答が最も多く、今回のパンデミックのような状況が発生した場合に備え、今後マーケターが優先的に注力する対策としては「オンラインにおける自社のプレゼンス強化」という回答が半数近い結果となりました。
不確定要素が多い中でも、消費者行動と広告業界の現在の情勢に影響を与えている幾つかのトレンドから、2021年にどのようなことが起きるかを予測し、広告主は対応に備えることができます。ここからは、2021年に広告業界で予測される6つの動向を見ていきます。
1.ECの飛躍的な成長が継続
EC(電子商取引)は既に広告主にとって極めて重要ですが、コロナ禍での在宅時間の増加に伴い、EC利用者が急増しました。全世界の小売企業1万4000社にわたるCriteoのデータを基に、米国における小売りのオンライン売り上げを、パンデミック前の2月2~14日の平均と6月15~28日の平均とで比較してみると、後者が30%高いと分かりました。また、日本においては、5月初旬のピーク時に小売りのコンバージョン件数が前年比で87ポイント高くなっています。
この増加は、買い物の量が増えた既存のオンライン買い物客と、必要に迫られた新規のオンライン買い物客の両方によってけん引されたものです。全世界1万3500人以上の消費者を対象としたCriteoの調査レポート「Peak to Recovery」によると、グローバルでは39%、日本では22%の回答者がコロナ禍のピーク時に初めて買い物をしたオンラインストアがあったと回答しました。これらの新規オンライン買い物客は、広告主がデジタルチャネルのオーディエンスを拡大するための大きなチャンスをもたらしています。
2.広告主はデジタル広告への投資を増加
パンデミックの最中に、日本の買い物客の44%が少なくとも1種類のオンラインショッピングの形態を新たに見つけており、今後もこうした状況が継続しそうであることから、広告主が先例にならいオンライン広告への投資を強化していくことが分かります。Peak to Recoveryでは、日本の買い物客の63%がパンデミック中に見つけた新しいオンラインストアで今後も買い物をしそうだと答えていることも分かりました。これにより、広告主は購入を促すだけでなく、今後長年にわたって顧客ロイヤルティーを構築できる可能性があるでしょう。
そのために広告主は、バーチャルイベント、有料ディスプレイ広告、コンテンツマーケティングなどのデジタルマーケティングチャネルに投資を拡大させると考えられます。State of Ad Tech 2021では、パンデミックに対応してどのような措置を講じたかを尋ねたところ、44%の回答者が今後6~12カ月以内にソーシャルメディアおよび小売りサイト/アプリ内広告(Amazonを除く)上の広告へのマーケティング支出を過去6カ月と比較して増加させる予定であることが分かりました。この数値は、自粛要請が2021年まで継続した場合、さらに伸びると予測されます。