Criteo 最高経営責任者(CEO)のJean-Baptiste Rudelle氏
リターゲティング広告事業を主軸とするCriteoは、既存顧客の活性化や新規顧客の獲得といった「フルファネル」での広告配信にビジネスを拡大している。最高経営責任者(CEO)のJean-Baptiste Rudelle氏に最新動向を聞いた。
フランス・パリで2005年に創業したCriteoは、2008年にPC向け広告商品の展開を開始、2011年に日本法人を設立した。2012年にはヤフーと資本・業務提携を結び、スマートフォン向けの広告配信を始めている。
同社が構築する広告配信網「コマースマーケティングエコシステム」は、2000社以上のパブリッシャー、1万9000社以上の広告クライアントで構成され、14億人以上の月間アクティブユーザーを抱えている。広告クライアントの流通額は年60兆円以上で、Criteoの広告経由の売上高は年2兆7000億円に達するという。
Criteoが展開する製品ラインアップ
同社製品の中でも主軸となるのが、リターゲティング広告配信基盤「Criteo Dynamic Retargeting」である。消費者がECサイトなどから離脱した後も行動を追跡し、広告配信先のウェブサイトに来訪した際にパーソナライズされた広告を配信する。消費者は広告をクリックすると、商品ページに直接誘導される。
ただ、「消費者のカスタマージャーニーは複雑化している」とRudelle氏は指摘する。昨今の消費者は、PCやタブレット、スマートフォンなど複数のデバイスを使い、さまざまなチャネルで購買活動や情報の収集・共有・発信をしている。
その結果、デバイスやブラウザごとにひも付けられるCookieベースのターゲティングでは、一人の消費者であっても複数人だと認識されてしまう。「Cookie軸でのデジタルマーケティングは難しくなってきている。消費者軸での最適化が必要だ」(同氏)
消費者軸での広告配信を可能にするテクノロジが「Universal Match」である。広告クライアントが保有する顧客のメールアドレスを匿名情報に加工(ハッシュ化)し、それを識別子とすることで複数のデバイスやブラウザにまたがる行動履歴を一貫して把握する。
Dynamic Retargetingには他にも、広告ROIを自動で最適化する予測入札技術「Predictive Bidding」や、広告素材の自動生成技術「Kinetic Design」、広告商品のレコメンド技術「Product Recommendation」も備わっている。これらのエンジンを組み合わせることで、誰に、何を、どのように提示するかを適切に判断できるという。
広告クライアントが運用するCRM(顧客関係管理)やDMP(データ管理基盤)を活用した既存顧客へのアプローチとなるのが「Criteo Audience Match」だ。例えば、季節商品だけを買い求める顧客にパーソナライズ広告を配信したり、オフラインの店舗顧客に対してオンラインでもキャンペーンを展開したりといったことが可能だ。特に、一定以上の期間購入がない休眠顧客の掘り起こしで効果を発揮するとしている。
「Criteo Customer Acquisition」は新規顧客を獲得するためのソリューション。月間14億人を超える消費者の行動データを蓄積し、購入履歴・閲覧履歴・興味関心を細かく分析する。その分析データを使って広告クライアントの潜在顧客層を探し出し、ターゲティングを配信する。
英国のアパレルブランドである「NEW LOOK」では、Customer Acquisitionを用いて新規顧客や休眠顧客を特定・ターゲティングし、パーソナライズ広告を配信。注文1件当たりのコストを74%低減する一方、受注件数は4倍に増加した。受注件数のうち、新規・休眠中の顧客率は62%に及んだという。
「Criteoはいま変化のときにある。われわれのプラットフォームは、シングルプロダクトからマルチプロダクトへと移行している。ブランド認知の向上から既存顧客の掘り起こし、新規顧客の開拓までフルファネルでの対応が可能になる。日本は米国に次ぐ第2位の市場だ。ヤフーとの協業もある。特にモバイルに関しては、日本での取り組みが先行している」(Rudelle氏)