電子契約はプロセスの速度向上に効く--「アフターハンコ」時代を考えるべき

河部恭紀 (編集部)

2021-01-04 07:40

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大により、多くの企業が従業員の在宅勤務を認めることになった。その場合に問題となるのが、紙の書類を使った作業だ。その作業のためだけに従業員を出社させる代わりに、その作業をどうすれば社外からでも可能にできるかを企業は考える必要がある。

 このような作業の1つに契約締結がある。そこで、これまでのように紙の契約書を使う代わりに、場所に縛られずに作業を完了させることを目的として、電子契約を急遽導入した企業もあるだろう。

 ここでは、企業が電子契約の導入を考えた場合、そのメリット、サービスを選ぶ場合のポイント、どのような準備をすべきかなどについて、契約ライフサイクルマネジメント(Contract Lifecycle Management:CLM)システムを提供するHolmesの代表取締役 最高経営責任者(CEO)笹原健太氏に話を聞いた。

トップのコミットが必要

 ――まず、電子契約導入によるメリットとはどのようなものがあるのでしょうか。場所を選ばずということがあるとは思いますが、どのようなメリットがあるのでしょうか。

笹原健太氏
笹原健太氏
提供:Holmes

 そうですね、まさに場所のところがあるとは思いつつも、旧来の紙の契約と押印というポイントに絞った時、ハンコだけが変わっても何か大きく変わるかというと、恐らくそうではないでしょう。一連の契約手続きを同じシステム上でできるようになる可能性が広がる方が大きいと思います。契約は、ハンコだけだとそんなに大した手続きではありません。

 契約と言うのは、契約書を作成したり、内部的に承認を得たり、締結時にハンコを押したり、その後に契約管理業務をしたりとか、そういったところのツールが今までバラバラだったと思います。そのあたりが同じ場所でできるようになる可能性があるのが大きいと思います。ハンコのところは、そのための第一歩なのかなと思います。

 今はリモートみたいなものは確かに注目されていますし、リモートの流れは今後も一定あるとは思います。ですが、アフターコロナになった時、リモートでできるかどうかというのは、そこまで大きなことではありません。

 契約に関する既存の顧客や検討中の企業とかでも、リモートのためにというのはあまりありません。もちろん、きっかけとしてはあったと思います。システム導入とかデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めていこうというきっかけとしてはあったかもしれません。ですが、リモートができれば何でも良いというのはあまりありません。

 実際には、さまざまな点を効率化したい、適切な契約管理をしたいということになります。いわゆるコンプライアンスのようなものを含めて「じゃあ、これを機にしっかりやっていこう」とかですね。そのような流れの方が本質的な気がします。

 ――電子契約サービスを選ぶ場合、企業はどういうところに気をつければ良いのでしょうか。

 結局は、何を実現したいかが大事だと思っています。契約の特徴として、さまざまな部署や階層が絡んでくるというのがあります。そのため、企業によって何を実現したいのかは必ずしも一枚岩ではない、というのが契約に関しての正直な感覚です。「これを機に契約の締結プロセスを見直そう」という会社と「とりあえずハンコのところを電子締結に変えよう」という会社では違いがあると思います。そのため、それぞれの実現したいことにシステムを合わせるのが一番大事だと思います。

 ただ、ハンコがなくなったからと言って何かが解決するとは正直思えなくて。つまり、契約のDXというような流れは企業内でこの先もあると思いますし、やっていかなければいけないと思うのです。先々まで見据えたシステムを導入するのが良いのではと思います。

 ――電子契約導入にあたって企業はどのような準備から始めたら良いのでしょうか。

 なかなか難しいのですが、トップのコミットが必要です。全社的なコミットがあると最高だと思います。「これを機にやるんだ」「契約業務やるんだ」というコミットです。契約はビジネスのスピードそのものに影響すると思います。そのため、今の競争環境が激しいビジネスの中でスピードを上げていくんだと。その中に1つとして契約もスピードを上げていくんだと。

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