SB C&S(旧ソフトバンク コマース&サービス、港区、単体従業員数1865人)は、孫正義氏がソフトバンクグループ(港区、旧日本ソフトバンク)を立ち上げた際の創業事業を継承するITサービスプロバイダーである。グループの主要事業の一角であるIT流通ビジネスを展開し、ソフトウェア流通事業、ハードウェアを含めた総合流通事業、モバイルアクセサリーを含めたメーカー事業、サービス事業の4領域で事業をおこなっている。
昨今では、テレワークやデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援するソリューションに注力。従来の商材やこれまでの社内で実践してきた取り組みをベースに新型コロナウイルス感染症を対策できる、アフターコロナ・ソリューションのサービス展開を図っている。今回同社は、その一環である電子契約システムを、自社の総務部門に導入した。
10年前からペーパーレス化、電子契約業務を見直し
もともとSB C&Sでは、環境マネジメントシステムの国際認証である「ISO14001」を約15年前に取得しており、環境負荷低減のためにペーパーレス化の取り組みを約10年前から本格的に実施してきたという。その一環として契約書の電子化に取り組み、すでに契約業務における承認、決裁のワークフローまでを電子化していた。
ただしその後の段階となる押印申請以降は、押印担当者による紙の契約書の作成、押印、相手との受け渡し、紙で保管というフローを採用。電子印鑑システムを活用して会社全体で約半数の契約書では電子化を達成していたものの、多くの企業同様に紙の業務フローが残存していた。
そのなかで、同社では新たに働き方改革の一環として場所にとらわれない働き方への移行を検討。総務部においても業務内容を精査していくなかで、出社するメンバーを減らしていくための措置として、請求書発行や立替精算業務の電子化、電子契約業務の見直しを実施した。
従来のフロー(出典:SB C&S)
「電子押印業務は50%以上まで達成できていたが、もう少し踏み込まないとそれ以上は減らないということが分かってきた。残った契約書をどう処理するかを検討し、法的な規制で朱肉が必要とされる以外の部分で、会社の契約印や経営層にサインをもらわなければならない業務フローを電子化する手段として、電子契約システムの導入を決めた」と、システムの導入を担当したSB C&S コーポレート管理本部 総務部 総務企画課 課長の川村美穂氏は経緯について語る。
見読性を確保、日本国内のデータセンターで管理
システムの採用に当たっては、統制管理と機能、コストという3つの条件のもとで数製品を比較し、アドビ(品川区)の電子署名サービス「Adobe Sign」が自社の現状に最も合うと判断。社内決裁後に契約書に押印するための申請業務から相手とのやり取りを経て文書を保管するまでの業務範囲を電子化した。
SB C&SにおけるAdobe Sign担当であるSB C&SのICT事業本部 MD本部 ビジネスソフトウェア統括部 第1BSWマーケティング部 1課の井上康介氏は、販売担当者の側面から3つの優位性があると話す。
SB C&S ICT事業本部 MD本部の井上氏
1つめは、世界標準で使用されているPDFを作成、編集するソフトウェアであるAcrobatを有しているアドビの製品であるため、長期保存する際に確実に見ることができる「見読性」を確保していること。
2つめは、日本国内のデータセンターでデータを管理していること。「Adobe Signのクラウドサービスは、日本で契約している顧客に関しては国内で管理されているので、署名の締結から文書の保管まで日本国内で完結できている」(井上氏)という。
そして3つめは、他のグローバルのソフトウェアやクラウドサービスとのシステム連携性が他社と比べて充実している部分である。