Scaled Agileは2月17日、報道機関向けにオンライン説明会を開催。日本におけるビジネス戦略について説明した。
同社 最高経営責任者(CEO)のChris James氏はビデオメッセージで「デジタルトランスフォーメーション(DX)は新型コロナウイルス感染症の流行の影響を受けてさらに加速している」と説明し、「ビジネスアジリティーの重要性がかつてないほど高まっている」と語った。また、同社 アジアパシフィック&日本地域担当バイスプレジデントのRob Howard氏は「DXの進行速度が他国に比べて“速くはない”ため、Scaled Agileでは日本を“新興市場”と位置付けている」と指摘。海外から見ても日本のデジタル化の遅れは明確であることをうかがわせた。
続いて、国内での事業戦略について説明した同社 ジャパン カントリーマネージャーの古場達朗氏は、2019年3月の就任から2年間で国内におけるコミュニティー活動などの「下地作り」に注力してきた経緯を振り返り、本格的に事業を展開するタイミングに至ったとした。
また、日本のDXの遅れについて、コロナ禍の影響もあって「これまで課題として認識してはいたものの先送りにしてきた課題が一気に表に出てきた」との認識を示し、「DXを加速する」ためにできることとして、「グローバルの知見を取り入れてDXを加速」することが必要だと語った。さらに、先行してDXに取り組んだ海外企業の数多くの成功/失敗の経験から得られた知見やノウハウを踏まえ、「正しいモノがあるのであれば、実際それを使ってやってみようではないか」という考えに基づいて同社のフレームワークが提供されていると説明した。
同社が提供する「Scaled Agile Framework」(SAFe)は、実態としては「ウェブ上に公開されているナレッジの塊」であり、アジャイル開発を成功させるための現場での取り組みから経営トップレベルでの企業文化の変革施策まで、さまざまなレベルのノウハウを取りまとめている点が特徴だという。
従来型の組織が新しい取り組みを行う場合の課題について同氏は、新しいことに取り組む人々はネットワーク型のチームで動くことになるが、各メンバーは同時に従来型の階層型の組織にも所属している形になり、既存の「効率重視で構成された“階層型組織”」と、「新しいものを生み出すための“ネットワーク型チーム”」の間に生じたあつれきで新しい取り組みが潰されてしまうことも多々あると説明。「企業の中に階層型の組織とネットワーク型の組織を共存させる必要がある」と指摘し、SAFeはまさにこうした共存を支えるものだと位置付けた。
同氏は国内での事業戦略として、まず前提として先行する北米や欧州では既にSAFeの活用がキャズムを超えているが、日本ではこれからキャズムを超えるための取り組みが必要になるといい、具体的な施策として「市場認知」「コミュニティー」「導入支援」「日本語化」「事例」といった取り組みを強化していくとした。
続いて、SAFeの国内ユーザーであり、パートナーでもあるNTTデータ 技術革新統括本部 システム技術本部 デジタル技術部 Agileプロフェッショナル担当 部長の市川耕司氏が、同社におけるSAFe活用事例である「Digital CAFIS」での導入経緯や効果について紹介した。
同氏はSAFeを推進する理由として「エンタープライズアジャイルのシェア1位であること」「経営層や組織全体の改革が含まれていること」「頻繁な更新がされていること」の3点を挙げた。また、実践を踏まえたコメントとして「小さな組織でアジャイル開発をしていくだけでは越えられない壁があるが、SAFeには経営層を変えていくためのノウハウが含まれている」と語った。
なお、古場氏は今後の展望として「3年でキャズムを超え、SAFeを日本に根付かせる」とし、3年後の目標として「認定者1万人超」「導入済企業50社超」「ビジネス規模500%超」という数字を掲げている。