Intelは米国時間3月8日、米国防高等研究計画局(DARPA)の「Data Protection in Virtual Environments」(DPRIVE)プログラムに参加する契約に署名したと発表した。DPRIVEは、完全準同型暗号(FHE)向けのアクセラレーターの開発を目指している。
Intel LabsのプリンシパルエンジニアであるRosario Cammarota氏は、「FHEは、使用中(in use)のデータをセキュアに保つという探求の果てにある究極の目的だ」と述べている。
FHEはデータセキュリティに向けたアプローチであり、データを暗号化したまま計算や分析を行うことを可能にする暗号化技術だ。DARPAはFHEについて、データの格納方法や操作方法に新たなレベルの確実性をもたらす可能性があると述べている。
DARPAは、「従来の暗号化は保存時、あるいは転送中のデータを保護するが、情報は計算を行う、分析する、機械学習モデルの訓練に利用するといった場合に復号されなければならない」とし、「データは復号によって危険にさらされる。抜け目のない敵対者による侵害や、偶発的な流出の危険が出てくるのだ。FHEによって、暗号化された情報を、暗号化されたままの状態で処理できるため、ユーザーは機密データのフル活用と漏えいリスクの排除との間でバランスを取れるようになる」と述べている。
FHEを目指す道は有望視されているものの、無視できないほどの著しい計算処理能力と時間が必要になる。
DARPAのプログラムマネージャーであるTom Rondeau氏は、「標準的なノートPCを使えば1ミリ秒で完了する計算処理であっても、従来型のサーバーでFHEを使って実行すると今のところ数週間もかかることになる」と述べている。
DARPAは、その処理時間を週単位から秒単位に短縮するためにDPRIVEを立ち上げた。
MicrosoftはクラウドエコシステムとFHE技術の重要なパートナーとして、「Microsoft Azure」や、米国政府と運用する「JEDI」クラウドを含む同社のクラウド上でのFHE技術のテストが完了し、同技術が完成した際には、その商利用を率いる。
Intelの役割は、FHEが現在抱えているパフォーマンス上のオーバーヘッドを低減するために、特定用途向け集積回路(ASIC)アクセラレーターを設計するというものになる。
Intelは「このアクセラレーターが実現すれば、FHEワークロードの実行処理が既存のCPUベースのシステムと比べると大きく改善され、処理時間が5桁の規模で短縮される可能性がある」と述べている。
IntelはDuality TechnologiesやGalois、SRI InternationalとともにDPRIVEに参加する。4社は、FHEの計算処理を実現する上で必要となる処理上のオーバーヘッドを削減し、暗号化されていないデータに対する同等の操作に匹敵する速度を実現するための、FHEアクセラレーターハードウェアと、ソフトウェアスタックの開発に向けてリサーチャーらを率いていくことになる。
さらに、FHEの実装を設計レベルで正しいものにし、ユーザーが自信を持って使用できるよう保証するために、チームはメモリー管理や、柔軟なデータ構造とプログラミングモデル、形式化された検証手法に向けた新たなアプローチを探求しているとDARPAは述べている。
Rondeau氏は「DPRIVEの目標はFHEの計算処理時間をプレーンテキストのそれと同じレベルにまで引き下げることだ。同テクノロジーのスケーラビリティーを高めつつ、この目標を達成できれば、データと、ユーザーのプライバシーを保護し、維持していくためのわれわれの能力に大きなインパクトを与えることになるはずだ」と述べている。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。