IDC Japanは3月16日、国内企業におけるAI(人工知能)活用の成熟度を調査した結果を発表した。
これは、国内の従業員数500人以上のユーザー企業でAIシステムを保有し、AI導入の方針決定に影響力のある回答者を対象としたもの。第1回(2019年11月)に引き続き第2回(2020年11月)を実施し、AIの活用に関する成熟度を経年比較を踏まえて定量的に評価、分析している。
調査結果によると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行の影響によりユーザー企業の事業変革に対する危機意識が高まっている。また、AIシステム市場は変革をけん引するDX(デジタル変革)への投資が加速することにより、AIがその中心的テクノロジーとしての役割を果たしていることから、COVID-19によるユーザー企業のIT投資抑制のマイナス影響を大きく受けることなく継続的に成長しているとする。
しかし、AIシステムの取り組みを先駆的に進めてきた企業とそうでない企業の間に格差が生じている。AIの取り組みを先駆的に進めてきたリーダー企業はCOVID-19を商機と捉え外部環境の変化に対しても柔軟かつ迅速に対応している一方で、遅れを取る企業はビジネス機会の時流をつかめずに苦戦しているという。
IDCでは、AI活用の成熟度について「ステージ1:個人依存(Ad Hoc)」「ステージ2:限定的導入(Opportunistic)」「ステージ3:標準基盤化(Repeatable)」「ステージ4:定量的管理(Managed)」「ステージ5:継続的革新(Optimized)」の5つのステージで評価。そして、今回の調査によって国内ユーザー企業はステージ1が3.5%、ステージ2が34.0%、ステージ3が38.0%、ステージ4が22.9%、継続的革新ステージ5が1.7%という結果になった。
前回の調査結果と比較すると、国内ユーザー企業の上位ステージ4以上を占める割合が17.0ポイント上昇し、特にステージ4の増加が15.5ポイントと顕著であることが分かった。しかし、ステージ5の割合は前回と大きく変わらず最上位ステージへの移行の難しさを示している。
国内AI成熟度の比較:2019年と2020年(出典:IDC Japan)
また、事業計画とAIの導入戦略を一体化し、ビジネス価値を獲得し始めているリーダー企業と、そうでないフォロワー企業の成熟度のステージ分布の傾向の差が明確に表れている。前回の調査結果と比較するとリーダー企業はステージ4以上の割合が2020年は57.9%と前年から43.6ポイント増加しています。一方でフォロワー企業はステージ3以下の割合が2020年は90.7%と前年から3.8ポイントの減少にとどまっています。国内企業全体の成熟度の傾向としては、リーダー企業の成熟度の上昇の勢いが影響し、24.6%が上位ステージ4以上を占める結果につながったとIDCでは推測している。
国内AI成熟度のリーダー企業とフォロワー企業のステージ分布の比較:2019年と2020年(出典:IDC Japan)
IDC Japan ソフトウェア&セキュリティグループのリサーチマネージ ャーの飯坂暢子 氏は「COVID-19はAIの成熟度の進展に効果をもたらす触媒の1つになっている。COVID-19を商機と捉えて成熟度をさらに向上する企業とそうでない企業との格差が広がっている。企業はAIの成熟度は一朝一夕には高められないことを認識し、AIの投資戦略を再度評価し長期的な視点と目的を持ちつつ、外部環境に柔軟に即応し改善と実行を繰り返すべきである」と分析している。