IBM Think

IBMがフォーカスするコロナ禍後のデジタル基盤

末岡洋子

2021-05-13 06:30

 米IBMは5月12日、年次イベント「IBM Think 2021」をオンラインで開催した。基調講演を行った会長兼CEO(最高経営責任者)のArvind Krishna氏は、ハイブリッドとAI(人工知能)へのフォーカスを改めて表明し、コロナ禍からの回復に向けて「デジタルの土台は不可欠」と呼びかけた。

「コンピューティングがあちこちに」を実現するハイブリッドクラウド

 CEOとして2回目、オンラインでも2回目の登壇となった基調講演でKrishna氏は、まず2020年を振り返り、「GDP(国内総生産)の減少にもかかわらず、DX(デジタル変革)の支出が増えた初めての年。デジタルの世紀に入った」と述べた。コロナ禍によるDXの加速は誰もが認めるところだが、Krishna氏はさらに、世界経済の10%に相当する7兆4000億ドルが今後3年でDXに費やされるというIDCの調査を紹介した。

IBM 会長兼CEOのArvind Krishna氏
IBM 会長兼CEOのArvind Krishna氏

コロナ禍からの回復期に入るにあたって、「企業が成功するためにはデジタルの土台が必要」とKrishna氏は述べる。そこで重要になるのが、ハイブリッドクラウドとAI――と続ける。

 ハイブリッドクラウドが重要な背景には、「ワークロードの25%しかクラウドに移行していない」(Krishna氏)という事実がある。クラウドのメリットは明らかだが移行できない、そこで「パブリッククラウドへの移行で抱える課題を克服するのが、ハイブリッドアプローチ」とKrishna氏。これにより、エッジを含むあらゆる場所でクラウドの機能を活用してメリットを得ることができるという。

 ハイブリッドアプローチにより、「コンピューティングがパーベイシブ(広がりやすさ)になり、組み込まれる。これが意味することは、コンピューティングそのものが各業界のニーズに合わせたものになるということだ」とKrishna氏。そして、「ハイブリッドクラウドは、次の10年の技術戦略を左右する重要な技術になる」と断言した。

 Red Hatの「Red Hat OpenShift」を使ってオープンなハイブリッドクラウド戦略を展開しているのが、Siemens Digital Industries Softwareだ。OpenShiftにより、Siemensの産業用IoT「MindSphere」を柔軟に実装できるようにした。これにより、製品の設計、製造からメンテナンスまでをモニタリングできるようにし、フィードバックループからの情報をもとに、デジタルツインを使いながら設計を変更できる、と同社の会長兼CEOを務めるTony Hemmelgarn氏は説明する。また、資産管理の「IBM Maximo」と自社の製品ライフサイクル管理技術を連携し、最新の状況を把握できるようにしているという。

Krishna氏と、Siemens Digital Industries Software会長兼CEOのTony Hemmelgarn氏(右)
Krishna氏と、Siemens Digital Industries Software会長兼CEOのTony Hemmelgarn氏(右)

 「顧客はわれわれのソフトウェアソリューションを実装するにあたり、柔軟性を求めていた。ここでRed Hat OpenShiftは重要な役割を果たしている」(Hemmelgarn氏)

 AIについては、「AIとデジタルツインとの組み合わせによりデータの相関関係を見出すことができる」と述べている。「問題に対してデータを活用するだけだと学び続けるだけ。デジタルツインを利用すれば、デジタルモデルと対比させることができ、理解が進む。これがより良い意思決定につながる」と語った。

 今後についてHemmelgarn氏は、エンジニアリングライフサイクル管理(ELM)の分野で「IBM Rational DOORS」などと自社技術の統合も進めていきたい、と述べた。

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