日本ヒューレット・パッカード(HPE)は5月27日、全社的に推進している“as-a-Service Companyへの転換”の一環となるデータ駆動型サービスプラットフォームを実現するため、新製品として「Data Services Cloud Console(DSCC)」「Cloud Data Services」と、これらを活用するためのハードウェア製品として新ブランドのストレージ製品群「HPE Alletra(アレットラ)」を発表した。
今回の発表の概要
概要を説明した同社 執行役員 コアプラットフォーム事業統括の本田昌和氏は「HPEはグローバルで大胆なメッセージを発信している」とした上で「ストレージ、あるいはデータプラットフォームといった世界の中で、HPEはゲームチェンジャーになる」とその内容を紹介した。
その意味について、同氏は「お客さまにとっての『データ管理の常識』を再定義する」という位置付けになると説明した。全社的な戦略として同社は“as-a-Service Companyへの転換”を掲げているが、「as-a-Serviceの世界を実現していく中で、単純にインフラのハードウェアやソフトウェアを消費モデル/従量課金で提供すればいいのではなく、実際にお客さまのアプリケーションが動くインフラ、この製品/ハードウェアの在り方そのものや、その管理の仕組みなどもas-a-Service型に合わせて変化していく必要がある」(本田氏)ということから、今回はまずストレージ管理/データプラットフォームの分野でこうしたコンセプトを具体化したのが今回の発表となる。
新ブランドのストレージ新製品の発表ではあるが、中核となるのは「Data Services Cloud Console」(DSCC)であり、HPE AlletraはフルNVMe対応などの特徴を持つものの、製品ラインアップの中での位置付けとしては「DSCCへの接続機能を実装したストレージ」と見るのが実態に即しているようだ
同氏は従来型のストレージ管理が専門知識を要する煩雑な作業であることを指摘。ストレージの種類や用途に応じて管理手法が異なることから「ソフトウェアやハードウェアのサイロ化」が発生しており、運用管理負荷が増大しているという課題の解決のために、同社ではデータ管理の常識を再定義する「Unified DataOps」のビジョン実現に取り組んでいるとした。
続いて同社のストレージ戦略について説明した同社 コアプラットフォーム事業統括 ストレージ製品本部 本部長の尹成大(ユン・ソンデ)氏は、今回発表の新製品としてフルクラウドネイティブ運用を実現するDSCC、DSCC上で提供予定のデータサービス/インフラストラクチャサービスであるCloud Data Services、そして次世代クラウドストレージをうたうHPE Alletraを紹介した。
DSCCの概要
DSCCの主な機能。当初はCloud Data Sericesとして「Data Ops Manager」「InfoSight」「Intent-based Provisioning」「Audit」の4機能が提供される。Intent-based Provisioningではストレージの運用管理作業の中でも負荷の高い「適切なアレイ上に必要なサイズのボリュームを確保する」作業を簡単な質問に答えるだけで自動的に実行してくれるなどの自動化を行う
HPE Alletraは同社のフルクラウドネイティブ運用に対応する新ブランドとして追加された製品で、ハードウェア面ではオールNVMeフラッシュアレイという特徴を持つ。ハイエンドモデルの「HPE Alletra 9000」とコストパフォーマンス重視の「HPE Alletra 6000」の2系統のモデルが用意されるが、ストレージOSという観点で言うとAlletra 9000は「HPE Primera」、Alletra 6000は「HPE Nimble」とそれぞれ共通となっている。そして、DSCCはオンプレミスで運用されるHPE Alletraの管理をクラウド側から実行できる運用管理コンソールで、さらにDSCC上で実行可能なデータ/インフラサービスであるCloud Data Servicesはまず4種類が用意され、今後は順次拡張の予定となっている。
HPE Alletraのラインアップと主な特徴
新発表製品/サービスの詳細を説明した同社 プリセールスエンジニアリング統括本部 ストレージ技術部 部長の中井大士氏は、製品提供の背景として「ユーザー企業がこれまでオンプレミスに蓄積してきたデータをきちんと活用していくことが重要」だと指摘し、これまでの“歴史的経緯”でサイロ化された状態にあるオンプレミスのデータに対してDSCCでクラウドネイティブな運用管理手法を提供するとしている。
DSCCは以前から同社がAI(人工知能)を活用したストレージ運用管理の自動化サービスとして提供している「InfoSight」と密接に連携し、InfoSightではカバーされていなかった「設定/配備の自動化」や「データ管理の自動化」といったより上位レイヤーのサービスを追加する形になる。
なお、セキュリティ面での配慮から、DSCCによる管理はまずストレージアレイ側からクラウド上のDSCCにアクセスし、セキュアなトンネルを開設して通信を行う。このため、ファイアウォールなどの設定でもDSCCを活用するためにインバウンドのトラフィックを許可する必要はない。逆に言えば、DSCCで管理可能なストレージアレイにはアレイ側からSDCCに接続する機能が必要であり、現時点でこの機能を実装しているハードウェア製品がHPE Alletraである、という位置付けになる。実質的にはNimbleおよびPrimeraの追加モデルと見ることもできるだろう。
既存のNimble/Primeraやその他の同社ストレージブランドにSDCC対応機能を追加していく計画はあるが、現時点では詳細は未定。最小構成価格は、HPE Alletra 9000が5124万円から、HPE Alletra 6000が2420万円から(いずれも税別)。
(左から)日本ヒューレット・パッカード 執行役員 コアプラットフォーム事業統括の本田昌和氏、コアプラットフォーム事業統括 ストレージ製品本部 本部長の尹成大(ユン・ソンデ)氏、プリセールスエンジニアリング統括本部 ストレージ技術部 部長の中井大士氏