CXの重要性は理解するが具体的な施策に至らない--テラデータ調査

鈴木恭子

2021-06-18 07:00

 日本テラデータは6月16日、企業のカスタマーエクスペリエンス(CX)責任者を対象にした、調査結果に関する説明会を開催した。同社は2019年にクラウドベースのカスタマーデータプラットフォーム(CDP)である「Vantage Customer Experience(CX)」を発表し、2020年8月に販売を開始している。

 説明に登壇した日本テラデータ コンサルティング事業部 マネージャー ビジネスコンサルタントの小野尚人氏は、「企業はデジタル上の顧客体験の重要性は理解しているものの、データから有用なインサイト(洞察)を得られていないのが現状だ」と課題を指摘し、CDPの必要性を訴えた。

CXの重要性は理解するが具体的な施策に至らない現実

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 今回の調査は米Forrester Consultingが米Teradataと英Celebrusからの委託を受けて実施したもの。米国/EMEA(欧州、中東、アフリカ)/日本を含むAPAC(アジア太平洋地域)で、170人のCXにかかわるビジネス意思決定者が対象。デジタル全体のパーソナライゼーションについて抱えるニーズと課題の調査を目的としている。

 同調査によると回答者の85%は「消費者にリーチするためにはデジタルを介したCXが最も効果的な方法」であるとした一方、「取得したデータを分析し、実用的なインサイトに変えることができる」と回答したのは56%だった。小野氏は「特に日本では顧客との関係構築にデジタルを重要視する傾向が強い」と説明する。

85%の企業はデジタル体験を重要視し、65%はリアルタイム性でのCX提供にこだわっている。しかし、実現できていないのが現状だという
85%の企業はデジタル体験を重要視し、65%はリアルタイム性でのCX提供にこだわっている。しかし、実現できていないのが現状だという

 さらに回答者の66%が「(直接購買行動に結びつくような)リアルタイムでのCXの提供を重視している」とし、65%は「インパクトのあるCXの創出が優先事項」だと回答している。小野氏によると、日本企業は他国よりもCXのデジタルシフトの重要性を認識しているという。

 一方、個々の顧客に最適なアプローチを取る「パーソナライゼーション」については課題も浮き彫りになった。回答者の82%が「自分が属する組織は他社(組織)と比較して多種類の顧客データ収集を目指している」としたものの、61%が「デジタル顧客データの取得と理解が難しい」と回答した。

パーソナライゼーションとCX向上の促進を阻んでいるのはサイロ化した顧客データだという
パーソナライゼーションとCX向上の促進を阻んでいるのはサイロ化した顧客データだという

 調査の結果、企業のCX戦略の遅れも明らかになった。CXがビジネスの成否を分ける差別化要因であると認識できている企業は全体の56%であり、効果的なCX戦略の計画策定をしていない企業は40%に上った。

 小野氏は「持続的に顧客エンゲージメントを高めるパーソナライゼーションを実現するためには、多種多様なデータソースから顧客データを統合し、高度な分析をノーコードで実行できる環境が必要となる。さらに、分析から得た洞察を顧客コミュニーケーションツールに自動連携し、素早いアクションに変換することが重要だ」と指摘した。

AudienceOneとの提携で的確なパーソナライズされたCXを提供

 テラデータは5月19日、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアムが提供するデータマネジメントプラットフォーム(DMP)である「AudienceOne」と「Teradata Vantage CX」の連携を発表している。説明会ではデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム パートナービジネス本部シニアマネージャの岩井崇明氏が登壇し、両社の連携概要を説明するとともに、企業のCX戦略が抱える課題解決に両社のソリューションが貢献できることをアピールした。

 AudienceOneは1億を超えるデバイスのIDなど膨大なデータを保有し、顧客企業が保有するデータと外部データを統合して解析し、高精度なサードパーティーデータを生成/提供するDMPである。今回の提携では、AudienceOneで顧客データの属性や関心事などを細分化し、Teradata Vantage CXで顧客データを分析することで、より的確なパーソナライズされたCXを提供できるようになるという。

 「(両社の提携で)AudienceOneのデータを用いた分析結果をもとに、詳細かつ多用な消費者データから洞察を得られる。さらに、Vantage CX内で作成したセグメントや拡張セグメントを作成し、AudienceOne経由でさまざまなプラットフォームでの広告配信ができる」(岩井氏)

「AudienceOne」と「Teradata Vantage CX」の連携概要図
「AudienceOne」と「Teradata Vantage CX」の連携概要図

 消費者のニーズと購買行動が多様化している状況においては、サードパーティーデータをどのように活用するかは喫緊の課題である。日本テラデータ セールステクノロジー事業部デジタルマーケティング担当マネージャーの三宅延幸氏は、「例えば、EC(電子商取引)サイトの場合、初めての訪問者に関するデータはない。しかし、サードパーティーデータからの顧客インサイトがあれば、(初めての訪問者に対しても)適切なCXが提供できる」と語る。

 三宅氏は海外の大手ファッション小売の事例として、Teradata Vantage CXとサードパーティーデータを活用して顧客プロファイルを作成し、サイト訪問者に対して動的なパーソナライズ施策を講じた事例を紹介した。具体的にはターゲティングの改善や最適オファーの作成、購入に至る行動の誘発などを実施したところ、施策前と比較してメール単位当たりの収益が8~16倍、収益が2000万ユーロ増加、クリック課金アフィリエイトの支出は700万ユーロも削減できたという。三宅氏は「(サードパーティーデータの活用による)潜在的な需要の理解は、今後ますます重要になる」とし、AudienceOneとの連携の意義を強調した。

サードパーティーデータを活用することで潜在顧客から見込み客への昇華が期待できる
サードパーティーデータを活用することで潜在顧客から見込み客への昇華が期待できる

 新型コロナウイルス感染症の影響で、消費者行動は大きく変化した。ニューノーマル時代には、ECサイトの存在が重要になることは明白だ。日本テラデータで代表取締役社長を務める髙橋倫二氏は「コロナ禍でもテラデータは成長している」とし、グローバルにおける2021年第1四半期(1月から3月末)のパブリッククラウドの年間経常収益成長率が前年同期比176%増、経常収支も同期比20%増となったことを強調した。

 さらに髙橋氏は「日本でもVantageとコンサルティングサービスに対する関心は高く、前年同期比二ケタ成長を続けている」とし、日本市場におけるビジネスの堅調ぶりをアピールした。

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