世界で最も強力なスーパーコンピューターをランク付けする「TOP500」の最新版で、トップ10入りを果たした新システムは1台だけとなり、性能は依然として向上しているものの、革新のペースが減速していることが明らかになった。
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TOP500リストの6月版では、米エネルギー省のローレンス・バークレー国立研究にある米国のスーパーコンピューター「Perlmutter」が5位にランクインした。それにより、Nvidiaの「Selene」は6位に順位を落とした。
処理速度が64.6ペタフロップスのPerlmutterは、スーパーコンピューターのエネルギー効率に焦点を当てた「Green500」リストでも好成績を収めた。消費電力1ワット当たり25.55ギガフロップスで、6位にランクインしている。
新たにTOP500にランクインしたのは、わずか58台だった。過去最低を記録した2020年11月の44台と比べて、さほど大きな開きはなく、当初に比べて性能の向上が減速していることを示唆している。例えば、新たに300システムがランクインした2007年には遠く及ばない。
その主な原因は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、商用高性能コンピューティングシステムへの投資意欲が大きく冷え込んだためだとみられている。
ランキングリストの作成者は、最新版は「変化がほとんどない」と認めており、日本の「富岳」が首位の座を堅持した。
2020年3月に稼働を開始した富岳は、過去最高の442ペタフロップスを達成している。オークリッジ国立研究所に設置されている、2位で148.8ペタフロップスのIBM製「Summit」と比べて、ほぼ3倍の性能を誇る。
理化学研究所(理研)と富士通の提携によって生まれた富岳は、富士通のカスタマイズされたARMプロセッサーを搭載し、そのピーク性能は1エクサフロップスを上回る。リスト作成者によると、「そうした成果により、このマシンを初の『エクサスケール』スーパーコンピューターとして言及する人もいる」
エクサスケールコンピューターは、毎秒100京回の計算処理が行えるため、精密医療から気候シミュレーションまで、さまざまなアプリケーションを大幅に高速化できると期待されている。中国、米国、欧州の国々は、今後数年間にエクサスケールのコンピューティングシステムを実現するという積極的な目標を掲げている。
富岳の後を追うトップ10はほぼ変わらず、2位のSummitに、同じくIBM製マシンの「Sierra」が続いた。
中国はランクインしたマシンの台数が、前回の212台から186台へと大幅に減少した。「何が理由かはっきりした証拠はないが、留意すべき変化だ」(リスト作成者)
しかし、中国がTOP500で優勢であることは変わりない。2位の米国は123台で大きく水を開けられている。
その一方で、中国のスーパーコンピューターの性能は、その他のマシンから大きく遅れをとっている。米国のパフォーマンスの合計は毎秒856.8ペタフロップスだが、中国は毎秒445.3ペタフロップスだ。
ほかに注目に値するのは、新規システムを中心にAMD製プロセッサーの採用が増加している点だ。同社の「EPYC」プロセッサーは、新たにランクインした58台のほぼ半数に搭載されているほか、上位10マシンのうち、Perlmutter、Selene、そしてドイツの「JUWELS Booster Module」が採用していた。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。