編集部からのお知らせ
ダウンロード公開中「ITが取り組むべきプライバシー」
最新記事まとめ「医療IT」

国立環境研究所ら、スパコン「富岳」で最大規模の気象計算を実現

NO BUDGET

2020-11-26 07:00

 国立環境研究所、理化学研究所、富士通、メトロ、東京大学の研究グループは、スーパーコンピューター(スパコン)「富岳」を用いて、水平3.5kmメッシュかつ1024個のアンサンブルという、大規模な全球気象シミュレーションとデータ同化の複合計算を実現した。

 富岳のような演算性能とデータ転送性能のバランスの取れたスパコンを用いることで、単純な流体計算だけでは済まない、気象予報システムのような複雑なソフトウェアの計算を大規模化/高速化することが可能であると分かったという。

 今回の研究は、ゴードン・ベル賞のファイナリストに選出された。ゴードン・ベル賞はその年において、高性能並列計算を科学技術分野へ適用することに関してイノベーションの功績が最も顕著な研究に与えられる。

 今回行った計算の規模は、世界の気象機関が日々行っている気象予測のためのアンサンブルデータ同化計算と比較して、約500倍の大きさのものとなる。この成果は富岳の高い総合性能を実証するとともに、最新のスーパーコンピュータとシミュレーションモデル、データ同化システムが互いに協調しながら開発を進めることによって、今よりも更に大規模な気象予報システムが実現可能であることを示したという。

富岳の外観(報道発表社:富士通)
富岳の外観(報道発表社:富士通)

 気象予測のさらなる精度向上には、観測データの利用効率を上げ、よりメッシュの細かい数値シミュレーションを実行し、より多くのアンサンブル計算を行う必要がある。アンサンブルはフランス語で「一緒に」や「同時に」という意味を示す。気象シミュレーションでは、計算初期値や境界条件のわずかな違いが時間とともに増幅し、予測結果に違いをもたらすため、初期値や境界条件を意図的に少しずつ変えた複数の計算(アンサンブル計算)を行い、より統計的に確からしい結果を求める。アンサンブルデータ同化ではアンサンブル計算から刻々と変動するシミュレーションの不確かさを見積もることで、より高度なデータ同化を実現する。

NICAM-LETKFデータ同化システムの実行の流れと、データの移動量(報道発表社:富士通)
NICAM-LETKFデータ同化システムの実行の流れと、データの移動量(報道発表社:富士通)

 より現実の大気に近い状態からの気象予測を可能にするため、今回の研究では、現在気象庁などが行っている計算から30倍以上多い1024個のアンサンブル計算を実施。アンサンブル数の増加によって、効果的に観測データの情報を活用することができるようになり、実際の天気予報の精度向上が期待できる。

 「NICAM-LETKFデータ同化システムの実行の流れとデータの移動量」の図では、計算の流れとそれぞれの計算で行なわれるデータの入出力量を示されている。

 まず、256個ずつのシミュレーション計算を実行し、これを4回繰り返すことで、1024個のアンサンブル結果を得る。それぞれの計算は異なる初期値を基に計算され、出力されるデータはのべ1.4ペタバイト、ファイル数は100万個に達する。

 次に出力されたデータを一気に読み込み、解析を行い、全く別々に開発されたプログラムである大気シミュレーションモデルNICAMとLETKFデータ同化システムの間のコデザインを行った。さらに、実数の桁数を減らした計算も実施している。

データ同化部分に関する計算時間の結果(報道発表社:富士通)
データ同化部分に関する計算時間の結果(報道発表社:富士通)

 こうした計算結果の一例として、データ同化部分の計算時間についてまとめたものが「データ同化部分の計算時間の結果」の図に示されている。

 横軸がアンサンブルメンバーの数、縦軸が経過時間で、点線が倍精度(8バイト)実数、実線が大部分を単精度(4バイト)実数で計算した結果となっている。各色はシミュレーションモデルの水平解像度を56km, 14km, 3.5kmと変えて行った結果を示している。図から、アンサンブル数を増やすと計算にかかる時間が増加していくことが分かるが、その内訳として、ファイル入出力にかかる時間はほとんど増えなかった。

 また、単精度実数を用いた計算は倍精度実数を用いた計算よりも高速で、かつアンサンブル数の増大に伴う計算時間の増加を小さく抑えられることが分かった。シミュレーションパートにおいても単精度を用いた計算では、実行速度を倍精度実数を用いた計算より1.6倍高速化することに成功した。

 最大規模の計算である3.5kmメッシュ・1024メンバーの計算では、富岳の総計算ノード数の82%である13万1072ノード(629万1456個の計算コア)を利用して、シミュレーション部分では29ペタフロップス、データ同化部分では79ペタフロップスの計算性能を得た。一連の計算全体は4時間弱で終わらせることができる見積もりとなっている。

 データ同化は気象予報だけでなく、シミュレーションモデルそのものの性能改善や、温室効果ガスや大気汚染物質の吸収/排出量の推定にも用いられる手法といえる。今後、今回の研究によって革新的な改良が施されたプログラムの用途をさらに拡げ、気象/気候/地球環境の研究に活用していく予定だという。

ZDNet Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

特集

CIO

モバイル

セキュリティ

スペシャル

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNet Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]