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企業セキュリティの歩き方

クラウドサービス利用で考えること--日本衰退の真犯人はIT業界説

武田一城 (ラック)

2021-07-28 06:00

 本連載「企業セキュリティの歩き方」では、セキュリティ業界を取り巻く現状や課題、問題点をひもときながら、サイバーセキュリティを向上させていくための視点やヒントを提示する。

 前回まで、クラウドサービスを利用する際の注意点と、注意すべきことの背景にある経済環境やIT業界の変化を深掘りした。海外ベンダーが多いクラウドサービスにおいて、グローバル市場ではローカルな日本への対応が重視されなくなった悲しい事実である。グローバル市場における日本市場の地位の変化は、少子高齢化、人口減少という数字の規模の上でも衰退フェーズに入ったことを意味し、厳粛に受け止めざるを得ない。そして、今回は日本企業に起きた「失われた30年」をより詳しく述べていきたい。

世界を狭く身近にしたインターネット

 世界は、この30年で急激に“狭くなった”。要因は幾つかあるものの、最大のものはITの存在だ。ITの出現と普及によって世界は小さく身近になった。もちろん物理的な大きさ、距離が変わったわけではなく、インターネットというネットワーク通信網が世界を結び、その環境を背景としたさまざまなシステムが普及し、物理的な距離の隔たりを感じさせなくなったのだ。

 その結果、インターネットでつながった巨大なグローバル経済圏が誕生した。これによって、各地域のローカル企業がグローバル企業と渡り合わなくてはならないようになり、商店街の個人店舗の競合がAmazonのような巨大企業になった。特にコロナ禍では、グローバル企業のネット販売という大きなビジネススキームにより、数多くの店舗が選別されるような状況が加速した。

 このようなグローバル経済圏の形成による影響は、日本も例外ではないが、企業間取引に限れば、例外であったかもしれない。その理由は、日本特有の地政学的な環境および商習慣だ。

 日本の企業間取引における最大の特徴は、高コストな顧客対応である。「お客さまは神様」という言葉が示す、対価以上のサービスを当然のように受けてきた日本市場独特の商習慣でもある。これは消費者相手のビジネスにおいても一般的だが、サービスを受ける方も日本人ということもあって、消費者向けビジネスでは、それなりにバランスが取れる場合が少なくない。消費者相手のビジネスは、売り手と買い手の個人同士のコミュニケーションの延長線であり、極論だが、それが破綻したとしてもビジネス全体に置いて大きな懸案になることは少ないからだ。

 しかし、企業間取引は、消費者向けのそれより複雑な関係性を伴うため、サービスが度を越している場合も散見される。そして、相互の人間関係なども複雑に影響する。たとえ現在の担当者がその状況を変だと思っても、両方の上司同士が昔からそのような関係性のことが多く、変わりにくい。かつ上司は決裁者でもあり、異常な状況だということを会社全体として認識していないことが多い。この日本の特殊性は、海外の人には理解しにくい。日本人が自虐的に、太平洋の絶海の孤島になぞらえて「ガラパゴス化」と呼んだことが定着してしまったほどだ。海外から見て日本は、とても閉鎖的で奇妙な国に見えるだろう。

 また日本には、「空気を読む」「あうんの呼吸」「忖度(そんたく)」という言葉で示される特殊なコミュニケーションがあり、それを前提とした契約書に記載されない暗黙知のような商習慣が多く存在する。もちろん、ある程度許容できるものなら潤滑油のような効果あるが、その時限りだったはずのサービスがいつの間にか習慣化されてしまうことがある。習慣は日常となり、常態化してしまえば、それは完全にコストに組み込まれる。高コストな企業間取引の関係性が完成する。

 筆者は、これが競争力を失ってしまった日本社会の正体だと考えている。現在の日本社会は、「お客さまは神様」という言葉を真に受けて必要以上に特別対応を続けた結果と、既得権益を持つ人や企業同士が過去の成功体験を維持しようとするという2つの要素が絡み合って形成されてきた。それが新規参入や新分野の立ち上げを妨げてしまい、多くの日本の有力企業は、1990年代とほとんど変わらないまま現在に至るのだ。このことは、日本では普通だが、新興企業が次々に出てくる海外とは大きく異なる。日本は変革できなかった30年だった。

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