インターネットの回線速度を調べるサービスと言えば、Ooklaの「Speedtest」が定番だ。Ooklaが、Starlinkや同社と競合する衛星インターネット企業であるHughesNet、Viasatのデータを調べたところ、興味深い数字が得られた。
必ずしも意外な結果だとは言えないだろうが、Ooklaの調査で、Starlinkの回線品質がHughesNetやViasatを大幅に上回ることが明らかになった。Ooklaによると、「Starlinkは、2021年第2四半期時点で、遅延が固定ブロードバンドの水準に迫る、米国で利用可能な唯一の衛星インターネットサービスプロバイダーであり、ダウンロード速度の中央値は97.23Mbpsで、現代的なオンライン生活のニーズのほとんどに対応できる水準だった。また、大差での2位はHughesNetで19.73Mbps、3位はVianetで18.13Mpbsだった」という。
遅延の面では全く競争にならなかった。遅延とは、インターネット上でユーザーが行動を起こしてから応答を受け取るまでの時間のことだ。Starlinkの遅延の中央値は45ミリ秒(ms)で、固定ブロードバンドの14msに近い数字だった。遅延が低いことは、音声通話やビデオ通話、ゲーミング、ライブコンテンツのストリーミングなどのアプリケーションで重要な役割を果たす。それに比べ、Viasatの遅延は630ms、HughesNetは724msで、前述のような低遅延を必要とする用途にはほとんど使えない水準だった。
これほどの差が出る理由は、単純に物理学的なものだ。量子ネットワークが実現しない限り、光速よりも速く通信することはできない。Starlinkは通信に低軌道衛星コンステレーションを使用しており、衛星が地表に比較的近い地上から550km~1200kmの高さを飛んでいるが、HughesNetやViasatの衛星は、それよりもはるかに遠い、地上から3万5000kmの対地同期軌道を使用しているため、どうしても信号のやりとりに時間がかかってしまう。
もちろんStarlinkも、ケーブルテレビや光ファイバーを使用したインターネットに比べれば速度は劣る。Ooklaによれば、米国で利用できる固定ブロードバンド接続の性能の中央値は、帯域が115.22Mbps、遅延は15msだという。ただし、Starlinkの本来の競争相手は、都市や郊外の地上回線を使用しているインターネットサービスではない。同社が目指しているのは、地方に住む人たちに別の選択肢を提供することだ。筆者は、いまだにダイアルアップモデムや非常に遅いDSL接続を使っている人たちがいるのを知っている。こうした回線では、帯域がキロビット毎秒(Kbps)の水準になってしまう場合さえある。
このようなユーザーにとっては、明らかにStarlinkの方が優れた選択肢だと言える。ただし、Starlinkのサービスはまだ展開されている最中だ。これは、特定の場所の特定の時点では、他のサービスよりもはるかに優れたパフォーマンスが得られることを意味している。Ooklaの調査によれば、最も優れたパフォーマンスを得られたのはアラバマ州モーガン郡のユーザーで、帯域は168.30Mbpsだった。一方、インディアナ州マディソン郡のユーザーが得られたパフォーマンスは、それよりも100Mbps以上低かった。