スイスの研究者チームは、独自の高性能コンピューターで円周率をこれまでよりも12兆8000億桁多く計算し、従来の世界記録を大幅に上回る62兆8000億桁目までを明らかにしたと発表した。
スイスの高性能コンピューターの計算によって、円周率が62兆8318億5307万1796桁目まで明らかになった。
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スイスのグラウビュンデン応用科学大学のデータ分析・可視化・シミュレーションセンター(DAViS)に設置されたこの高性能コンピューターは、円周率を62兆8318億5307万1796桁目まで計算し、Timothy Mullican氏が303日をかけて2020年に達成した50兆桁の記録を更新した。
Mullican氏の前にこの記録を保持していたのは他でもないGoogleで、2019年に円周率を31兆4000億桁強まで計算した。
スイスの研究者チームは、この結果を108日強で達成した。これは従来の最高記録であるMullican氏の記録よりも約3.5倍速く、現在は「ギネス世界記録」に認定するための検証作業が行われている。円周率の数字が公表されるのはこの検証作業が終わってからになるが、同チームは、現時点で判明している円周率の最後の10桁が「7817924264」であることを明らかにしている。
多くの人にとっては、「円周率」は遠い昔に算数の授業で習ったもので、「円の直径に対する円周の長さの比率」を表す定数であり、「およそ3」や「3.14」という風に最初の数桁だけを覚えているはずだ。
数学者たちは、数千年前から(古くは古代バビロニア時代から)円周率の数字をできるだけ正確に計算しようと試みてきた。しかし、「円周率」は無理数(小数では表現しきれず、桁が無限に続き、循環小数ではない数)であることが分かっているため、あまり多くの桁を計算しても実用的な意味はほとんどない。このため現在では、円周率計算はハイパフォーマンスコンピューティングの非公式なベンチマークのようになっており、科学者がコンピューティング能力を競う舞台となっている。
DAViSの代表であるHeiko Rolke氏は、「今回の記録への挑戦にはいくつかの目標があった」と述べている。「私たちは計算の準備と実行の過程でプロセスを最適化し、多くのノウハウを築き上げることができた。これは、データ分析やシミュレーションなどの計算量が大きいプロジェクトを共同で進めている私たちの研究パートナーにとって大きなメリットになる」
DAViSの研究者チームは、1980年代後半に開発された「Chudnovskyの公式」と呼ばれるすでに確立されているアルゴリズムを使用した。この公式は、円周率計算のもっとも効率的な手法だと考えられている。GoogleのチームやMullican氏も、Chudnovskyの公式に基づくアルゴリズムを使用していた。