NVIDIAは、英国で最速となる4000万ポンド(約60億円)のスーパーコンピューター「Cambridge-1」の構築を開始する計画を2020年秋に発表した。しかし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が今なお世界中で猛威を振るっているため、同社のチームはさまざまな難関に直面することになった。スーパーコンピューターの構築を大西洋をはさんだ遠隔地から管理するという、前代未聞の複雑な作業を強いられたのだ。
「Cambridge-1」は、発表からわずか20週後に運用の第1段階に達した。
提供:Kao Data
Cambridge-1は、3月初旬の時点で最初の発表からまだ20週間しかたっていないが、既に運用の第1段階に達している。これは、普段であっても十分に素晴らしいペースの進捗だ。しかも、パンデミックのさなかである点を考えると特筆すべきものがある。これに対して、現時点でスーパーコンピューターランキング「TOP500」に名を連ねているコンピューターの大多数では、コンセプトの立案から最終的な完成に至るまでに平均で数年を要している。
このスーパーコンピューターは、データセンタープロバイダーのKao Dataが英国のケンブリッジに有しているデータセンターの1つに設置されている。現在、科学者らによるヘルスケア分野のリサーチ目的での使用に先立って、最終テストが進められているところだ。
Cambridge-1は機械学習(ML)分野での応用を念頭に置いて設計されており、80基の「NVIDIA DGX A100」を搭載し、大規模な人工知能(AI)ソフトウェアを実行できるようになっている。DGX A100は、20基で数百基分のCPUに相当する計算能力を発揮するため、Cambridge-1はAI分野の処理で400ペタFLOPSに及ぶ性能を発揮し、実質的に同国最高速のシステムとなっている。
Kao Dataのセールス及びマーケティング担当バイスプレジデントを務めるSpencer Lamb氏にとって、この規模の設備を短時間で配備することは、控えめに言っても「驚くべきもの」だという。
Lamb氏は米ZDNetに対して「これは挑戦だった」と述べ、「NVIDIAのチームは米国の西海岸を拠点としており、通常時であれば現地の施設を訪れていたはずだ。しかし彼らは施設に足を踏み入れることなく、遠隔地から設置作業を管理する必要に迫られた」と続けた。
Kao DataはCambridge-1の構築を発表する半年以上前から、同データセンター内でのCOVID-19の感染拡大を防ぐ目的で厳格な運用規則を実施していた。これはつまり、絶対必要なスタッフ以外は誰もサイトへのアクセスを認めておらず、英国最速のスーパーコンピューターに関する作業を実施するNVIDIAのチームであっても建物内への入館は許可されないということを意味していた。
COVID-19の感染拡大を防ぐための厳格な運用規則が実施されているため、本当に必要とされるスタッフ以外はサイトへのアクセスを許されていない。
提供:Kao Data
Lamb氏は「Zoom」による通話で米ZDNetに対して、顧客がデータセンターのスペースを購入する場合、建屋の状況を吟味するために多くの人々がやって来て、歩き回るのが通例だと説明し、「こういった手続きすべては、われわれが今しゃべっているような、このメディア(Zoom)を通じて行われた」と続けた。