サイボウズは8月27日、オンラインメディアセミナー「理想なきDXは『ダメックス』? サイボウズが紐解くDXの3大失敗原因と解決法~東急のkintone導入事例から成功の秘訣を解き明かす~」を開催。デジタルトランスフォーメーション(DX)の失敗パターンや現場の声を語った。
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サイボウズ 事業戦略室 kintoneビジネスプロダクトマネージャー 相馬理人氏
サイボウズ 事業戦略室 kintoneビジネスプロダクトマネージャー 相馬理人氏は成功の秘訣として「事業会社とITベンダー間でDXの理想と現実を共有」することだと提言した。
理想、継続性、人が原因
相馬氏はダメなDX、つまり「ダメックス」の特長として、「なぜDXを行うのか現場に伝わらず、知識やノウハウが不十分な状態でも大きなスコープで取り組み、単発的に終わっている」と指摘する。
今やDXに取り組むのは中堅中小企業にまで広まり、どの企業も競争優位性の確立に奮起しているが、電通デジタルの調査によれは一部の成果にとどまる企業が約3割、約8割の企業が成果を感じていない。
DXの失敗例として、相馬氏は「1つは『理想』による失敗、2つめが『継続性』による失敗、そして3つめが『人』による失敗」と指摘する。
たとえば企業が思い描く「理想」であれば、 社員がDXを実施する理由を把握せずにシステムの改善や現場の改革に取り組むケースや新システムの利用に意義が感じられないため、以前のシステムに逆戻りするケースを指す。
DXを追い求める「継続性」の文脈では、短期的にシステム改修を繰り返した結果の保守運用費の高騰化、システム刷新自体が目的となった、その場かぎりの対策が当てはまる。
「人」の場合は自社に必要なデジタル手段を選定する知識不足や専門的知識不足による投資最適の見誤りが理由となるという。
サイボウズが掲げたDX失敗につながる3要素を深掘りすると、多様な課題を挙げ連ねなければならないが、一般的な企業がDXを成功させるためには「事業会社は理想と現実のギャップを課題と捉え、ITベンダー(SIer)にシステム発注するが、ITベンダーはシステム納品がゴール。事業会社が求めるビジネスモデルの変革とすれ違ってしまう」(相馬氏)
だからこそ、「(事業会社とITベンダーの)ゴールをニアリーイコールとし、お互い何を解決したいのか、どのような状態を目指したいのか、ベンダーの枠を超えたパートナーシップというプロジェクト体制が必要」(相馬氏)
相馬氏は密接な伴走型SIerの選定が欠かせないと提言。この方法であれば、企業側も自社社員が開発プロジェクトへ密接に取り組むため、IT人材増という利点につながるという。
一見すると絵空事のように見える話だが、東急はSIerであるミューチュアル・グロース(千代田区)の協力を得て、ECサイト「SALUS ONLINE MARKET」の運営改善に成功した。東急はECサイトの注文を定期的にダウンロードし、Excelファイルで加工してから、各店舗への連絡するアナログな手法を採用していた。