神戸製鋼所(神戸市中央区、従業員数1万1560人)は、鉄鋼、溶接、アルミや銅などの素材や産業機械、エンジニアリング、電力など幅広い分野で事業を展開している。
素材系事業、機械系事業、電力事業の3本柱による成長戦略を軸に、輸送機の軽量化やエネルギー、インフラなど中長期的に伸張する成長分野に経営資源を集中し、事業の発展と社会貢献を目指している。
転記ミスや指示書の遅れで現場に負担
同社の茨木工場(大阪府茨木市)は、国内最大の溶接材料生産工場であり、被覆アーク溶接棒や、フラックス入りワイヤーなどを製造している。しかし紙台帳で材料を管理していたため、製造現場への指示書を作成する際に、手作業による膨大な転記作業が発生していた。その結果、転記ミスや指示書作成の遅れなどが生じていた。
神戸製鋼所 溶接事業部門 総務室業務チーム 松村葉子氏
さらに、在庫の棚卸しも紙台帳からの転記のため、期末の繁忙期にも関わらず丸一日を費やす必要があり、大きな負担となっていた。同社 溶接事業部門 総務室業務チーム 松村葉子氏は、「転記ミスや指示書作成の遅れは、現場に負担をしわ寄せしてしまい、関係者から不満の声が出ていました。またメンバーが入れ替わると作業負荷が増えてしまうので、属人化の改善も課題でした」と、当時の課題を振り返る。
そこで松村氏は、同部門 ICT企画チームに配属された田中温子氏とともに2019年1月、紙からデータによる管理への移行を検討し始めた。その結果、いくつかの選択肢の中から同部門が採用したのが、サイボウズの業務アプリ構築PaaS「kintone」だった。
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現場のためのシステムを自分たちの手で構築
神戸製鋼所 溶接事業部門 ICT企画チーム 田中温子氏
3カ月に渡ってパブリッククラウド上への独自データベース構築も検討した結果、既に別業務での利用実績があり導入しやすかったこと、優れたユーザーインターフェースなどを決め手に2019年4月にkintoneの採用が決定。本格的な移行方法の検討が始まった。田中氏は「クラウドサービスなので導入コストが低いこと、またインターフェースの使い勝手がよく、外注せずに自分たちで開発、運用できることが魅力でした」と話す。
検討段階から現場の意見を重視し、データ移行作業が始まると、現場のメンバーもkintoneの導入チームに合流した。マニュアルや作業手順の策定も現場のメンバーを中心に実施した結果、業務フローが大きく変化したにもかかわらず、スムーズに導入が進んだという。
松村氏は「世代交代が進み、紙ベースの仕事に疑問を感じるメンバーが増えたことが追い風になりました。チャレンジに抵抗がないメンバーだったので、kintoneの導入に積極的に協力してくれました」と語る。