「Docker」はコンテナーテクノロジーとして人気を誇っているが、Dockerという企業は問題に悩まされてきている。まず、同社は適切なビジネスプランを見つけ出す上で苦労を重ねた。その後、資金不足に陥った。同社は2019年後半に、「Docker Enterprise」の製品ラインとその関連事業をMirantisに売却することで、これらの問題を解決したかのように見えた。しかし息をつく間もなく、「Kubernetes」でコンテナーランタイムとしてのDockerが非推奨となった。この点に関しては実際のところ大きな問題ではないとはいえ、Dockerに関する懸念をユーザーにもたらした。そしてDockerは同社の事業を活性化する新たな試みとして米国時間8月31日、「Docker Desktop」の無償版の利用を、個人や小規模企業、非商用のオープンソースプロジェクトに限定することを発表した。これら以外のユーザーはサブスクリプション料金を支払わなければならなくなる。
Docker Desktopは「Mac」と「Windows」向けの統合開発環境(IDE)だ。開発者はこれを使用することで、KubernetesやLinux上で稼働するコンテナー化されたアプリケーションやマイクロサービスをビルドできる。
今回の変更により、Dockerの「Free」(無償)プランは「Personal」(パーソナル)と呼ばれるようになる。そして、従業員が250名以上の企業、あるいは売上高が1000万ドル(約11億円)以上の企業は、Docker Desktopのサブスクリプションを購入する必要がある。ただ、アップストリームのオープンソース版Dockerである「Docker Engine」と「Moby」プロジェクトは今まで通りの扱いとなる。とは言うものの、Dockerの新たな使用許諾には問題があると思う人もいるかもしれない。しかしOpen Source InitiativeのOpen Source Definition(オープンソースの定義)によると、あらゆるオープンソースプログラムは商用化できるのだ。
その点はさておき、1ユーザーあたり月額5ドル(約550円)の「Docker Pro」と1ユーザーあたり月額7ドル(約770円)の「Docker Team」のサブスクリプション料金はこれまで通りとなっている。なお、これらのサブスクリプションにはDocker Desktopを商利用するための権利も含まれている。さらに、1ユーザーあたり月額21ドル(約2300円)という新たな「Docker Business」には集中管理機能やシングルサインオン(SSO)機能が追加されているほか、セキュリティの強化も施されている。
具体的にはDocker Businessでは、「Docker Hub」のイメージライブラリーから開発者がアクセスできるコンテナーイメージを統制する機能が追加されている。これにより開発責任者は自らのチームが使用できるイメージをよりきめ細かく統制できるようになることで、よりセキュアなアプリケーションを構築できるようになる。こういった統制は、Security Assertion Markup Language(SAML)を用いたSSOによって、開発者が利用できるレジストリーを制御することで実現される。さらに管理者はDocker Desktopインスタンスを遠隔地から管理できるようになる。
料金体系の変更は、名目上は8月31日から施行されているが、実際には2022年1月31日まで移行期間となっているため、Docker Desktopを使用し続ける上で有償サブスクリプションを必要とする企業も、それまでは同製品を無料で使用できる。
そしてもちろん、Docker Desktopを除く、Docker EngineをはじめとするほとんどのDocker製品は、Apache v2.0ライセンスの下でのオープンソースにとどまる。
Dockerは、今回の変更に関するFAQの中で、「Docker Desktopの最新のサブスクリプション条件は、当社のビジネスを持続的にスケールさせる必要性を反映しており、すべてのDockerサブスクリプションに価値の提供を続けられるようにするものだ」と説明している。つまり、同社は再度ビジネスモデルを調整し、収益化する必要があるということだ。
また、「このことは一部の組織にとって大きな変化となるかもしれないことを私たちは分かっている。私たちは、皆さんがこの移行をできる限りスムーズにできるよう支援することに尽力している」としている。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。